ニュースレター35号
2019/06/22
平成30年度事業報告
【相談事業】 電話相談件数は、114人から415件の相談がありました。新規相談者は25人、継続相談者38人でした。
【自立支援事業】面接や同行支援を行いました。面接は新規者2名、シェルター退所者35人に116回行いました。 シェルター退所者7人に市役所や裁判所などへの同行を116回行っています。シェルターを退所したからといって支援が終わりではなく、困ったときに気軽に相談にのれるように努めています。離婚調停などはシェルター退所後に始まりますから、人によっては同行支援が必要となる場合もあります。シェルター退所後の子どもの学習支援を37回行っています。退所者対象の母子への長期的支援の一環として花見やリンゴ狩りイベントも実施しました。
【一時保護事業】シェルターの入所者は、18家族33人、829日の利用でした。入所者への面接は268回行い、市役所や裁判所などへの同行支援は76回行いました。学習に不安のある子どもに14回の学習支援を行っています。
できる限り安全性を保つために、山口県から夜間警備保障費の援助を受けています。また、宇部市のDV被害者補助事業で夜間の照明に人感センサーライトを設置しました。また、24時間防犯カメラを設置し、安全性を高めることができました。
【広報啓発事業】デートDV防止教育を13高等学校2865人に、3中学校261人に行いました。DV被害者支援講座の講師を4回行いました。たくさんの子どもがDVやデートDVの被害者・加害者にならないことを願っています。
また、山口県男女共同参画フォーラム、連合メーデーフェスタ、ANAクラウンプラザホテル主催の「虹の架け橋」でパネル展示というかたちで参加し、たくさんの人に観てもらえる機会を提供しました。
スタッフの研修としては、全国シェルターシンポジウム、山口県DV被害者支援関係者研修会、びーらぶインストラクター養成講座、日本子ども虐待防止学術会議などで研鑚を積みました。
今年も赤い羽根テーマ募金にご応募下さり、ありがとうございました。
平成30年度の赤い羽根テーマ募金の助成では、143人の方から1,311,500円の寄付がありました。面接同行支援費等に当てます。また、新しい事業として暴力を受けた女性とその子どもたちのための心理教育プログラム「びーらぶ」を実施するためのインストラクター養成講座に、赤い羽根テーマ募金を使いたいと思っております。
(2) シェルターからの報告
最近、入所したいという人たちが増えています。満室で空き室がでるまで待っていただくか、お断りせざるを得ない状況が続いています。
何故満室かというと、退所先を見つけることが難しいわけです。公営住宅は臨時に半年から1年入所できますが、半永久的ではありません。期間が過ぎれば、転居先を見つけ、再度転居せねばなりません。公営住宅は離婚できていないと入居できないところもあり、抽選に当選することも難しいです。民間では、「どう大家を説得できるか」で、頭を悩ませます。
先日、シェルターとして2室を提供いただいているオーナーに、退所先を相談しましたところ、大変快く物件を紹介していただき、退所先が見つかりました。とてもうれしい出来事でした。
DV被害親子を分離せずに保護したい
NPO法人山口女性サポートネットワーク 理事 弁護士 鈴木 朋絵
親の一人が暴力を行い、もう一人の親が逃げたいと決めたときに子どもと一緒に保護を受けることができるのか。これは残念ながら簡単な話ではありません。
加害親から被害親への暴力が確認できるのであれば、配偶者等暴力防止法3条3号に基づく配偶者暴力相談支援センターでの一時保護などが受けられます。でも、「配偶者間の暴力が確認できない」「暴力はあったが直近ではない」「精神的暴力である」といった理由から配偶者等暴力防止法による保護を断られるということが起きています。内閣府に設置された「DV等の被害者のための民間シェルター等に対する支援の在り方に関する検討会」が2019年5月に発表した報告書にも「身体的暴力のみを緊急性の判断材料とする例が多く、例えば、年齢・国籍・障がい・疾病等の属性があると集団生活への適応困難、現金(貯金)がある場合は自力での避難可能、加害者が逮捕・拘束されていると危険性がない等の理由で、一時保護されないケース」があると記載されています。全国共通の課題です。
子どもへの虐待が確認できるとしても、児童虐待防止法では親子を一緒に保護することはできません。保護の対象は虐待を受けた子どもだけです。この法律での保護を求めれば、子どもを守りたい親と子どもが引き離されてしまいます。
内閣府と厚生労働省は、千葉県野田市での児童虐待による死亡という痛ましい事件を受けて、ようやく平成31年2月28日付けで「配偶者暴力相談支援センターと児童相談所等との連携強化等について」を発しました。しかしこの連携強化は配偶者等暴力防止法での一時保護が難しい場合に児童相談所での適切な支援を確保するように促すことがメインです。上記のような一緒に避難したい親子の保護が進むと期待することができません。法のすきまを埋める作業が必要です。
そしてこのような法や行政のすきまを埋める機能も果たしているのが、民間DVシェルターです。配偶者等暴力防止法による一時保護委託を受けるのでなければ入所費用がかかります。また山口女性サポートネットワークもそうですが民間だからこそ一時保護終了後の被害親子の自立のための中長期的支援ほか多様な内容の支援要請にも対応しています。
内閣府は今年「DV等の被害者のための民間シェルター等に対する支援の在り方に関する検討会」を開催し、5月に報告書を公表しました。これを受けて、6月18日には首相官邸が「女性活躍加速のための重点方針2019」を決定し支援を進めるとの報道もありましたが、具体策は今後会合を開き年内にとりまとめる予定とのこと。内容はまだまだわからず今後の発表が待たれます。いまも地道に会費やご寄付を集めることは欠かせません。
今年、山口女性サポートネットワークでは、寄付金をいただいたおかげで、DV家庭により傷ついた子どもの心を回復するためのプログラムを山口県内で実行できるように、スタッフ養成のための研修会等を開催します。ぜひ多くの方々のご参加をいただきたいです。
会員の皆様からの会費、寄付金は支援のために大切に使わせていただいています。今後もどうぞよろしくお願いします。