ニュースレター21号
2012/07/02
Yamaguchi Support Network for Women 2012年6月 21号
YSNW Newsletter 山口女性サポートネットワーク
昨年度事業について
昨年度も様々なことが起きましたが、一つずつ乗り越えているところです。たくさんの方から会費やご寄付、また、物資もいただきましたことを感謝申し上げます。
5月20日に総会をしましたので、昨年度の事業及び決算報告をいたします。
相談事業ですが、山口女性サポートネットワーク単独の相談件数は、338件です。相談時間内に固定電話で相談員が受けたもののほかに、携帯電話でも受け付けています。その為、相談件数は増えています。DV被害者からの自立後の相談、同居している中での相談など内容は様々です。一人の人に注目してみると、時間の経過とともに心の変化や生活形態の変化によって、相談内容も変化していきます。また、一時は頻繁にかかってきたものが、電話の回数も減っていきます。また、離婚その他の調停や裁判中は大変不安になられるので、相談電話も多くなります。
このような一人ひとりに注目できる電話のほかに、 相談員と相談者は一期一会の全国からのホットラインを分担しています。それを受信した件数は1000件以上になります。同じ人から二度と出会えない電話でもあります。
自立支援事業については、パソコン教室、自助グループ、ステップハウスの運営をしています。自助グループは県内に4グループあります。同じ悩みを持つ人との出会いによって、目覚ましく元気になる人もあられます。これまで自責の念で苦しんでおられた人が、自分だけではない、自分だけが悪いのではないと思うことが出来るようになられたようです。この事業は、山口県から「配偶書暴力等自助グループ活動企画運営業務」を委託されています。その委託によって事務員1人を雇用することが出来ました。また、自助グループのサポーターの交通費、手当を出すことが出来ました。また、年2回行った合宿は好評で、だんだん参加者が増えています。癒しの場が少しずつ出来ているところです。ステップハウスも、マンションの一室を提供していただいていますので、行き場のない方に提供しています。また、皆様方からいただいた家電や布団など、生活用品を必要な人に提供しています。昨年度は2人の方に家電を提供することが出来ました。また、全国女性シェルターネットが仲介している自立のための資金支援事業(PMJ基金)も2件紹介しました。
緊急一時保護事業ですが、昨年度は、長期利用者はなく、1~3泊程度の利用者が4人ありました。3泊の利用でしたが、1年かけて離婚まで漕ぎつけられた人もおります。一度戻ってしまった人は別れることはできないという思い込みはしない方がいいという例を体験しました。短期間でも、精いっぱいの支援をすれば、入所された方に解決に向かう力が湧いてくるのだということ実感しました。
啓発事業としては、山口県男女共同参画協働事業「介護事業者に役立つDV被害者を理解するセミナー」を
開催しました。雇用者向けのセミナーのためか、参加者は30人と多くはありませんでした。まだまだDV被害についての啓発が足りないということを実感した日々でした。また、山口県男女共同参画フォーラムに参加したり、他団体主催のDV被害啓発講座等の講師として7回派遣しました。昨年度から始まったデートDV防止講座の派遣講師として大学や高等学校で授業を5校で行いました。やまぐち女性財団や宇部市での講師派遣事業として授業をしました。このような取り組みは山口県内では初めての試みでした。若者へのDV防止教育の必要性を述べてきた私たちとしては、やっとここまで来たか、という感想を持ちました。
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ご案内 山口県男女共同参画協同事業
講演会「交際相手からの暴力への対応ノウハウ
日時 2012年 8月20日(月) 13:30~16:00
場所 セミナーパーク 大研修室
講師 イダヒロユキ氏(立命館大学非常勤講師、ユニオンぼちぼち副代表)
主催 NPO法人山口女性サポートネットワーク 山口県
日程
13:30~ 開会行事
13:40~15:00 講演 デートDVの支配の構造、どのような対応が望ましいか
15:10~16:00 質疑応答 相談者として、具体的事象について検討する
16:00~16:10 閉会行事
交際相手からの暴力に対して、予防教育は山口県でも昨年から高等学校に講師が派遣されて実施されるようになりました。しかし、実際に交際相手からの暴力に対して、DVほど対応ノウハウが確立していません。DVとよく似ていますが、同居していないこと、対応の法律もないことなどから手つかずのままです。婚姻関係にはないのだから、別れることは簡単だ、暴力を受けながら会いに行くからいけないのだ、と思われてきたからです。しかし、相手のマインドコントロール下に入っている状態にいることや、恋愛感情があるがゆえに別れることは大変難しく、傍で別れることをすすめても聞き入れる耳を持たないのが現状です。では、具体的に被害者に対してどうのように対応すればいいのか、母親や友人から相談を受けた場合にどういうアドバイスがあれば当事者たちは安全に別れることが出来るのか、また、加害者が同じ職場や同じ学校にいる場合の加害者に対する対応はどうすればいいのか、非常に困っている状態です。
そこで、DV加害者プログラムファシリテーターであり、若者のデートDVについて研究しておられる伊田広行氏にそのあたりのお話をうかがいながら、山口女性サポートネットワークとしての対応ノウハウも伊田氏と一緒に研究していきたいと思っています。
ご入金、有難うございました。賛助会員のみなさまへ
私どもの活動に、いつもご理解と温かいご支援を賜り、誠にありがとうございました。
被害女性のためのシェルター活動や研修講座、被害者女性の自立へ向けての様々な事業を試行しております。しかし、私たちNPO活動の基本は、ご理解いただく皆さん方の意思と篤志に支えられております。どうか、本年も、多くの皆さんのご賛助・ご支援を賜りますようお願いいたします。
会員:年会費5千円、賛助会員(個人 年会費1口3千円、 団体 年会費1口1万円)
郵便振替口座:01370-2-68031 口座名:山口女性サポートネットワーク
郵貯銀行 店番139 一三九店(イチサンキュウ店) 当座0068031ヤマグチジョセイサポートネットワーク
皆様のご参加をお待ちしています。
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ハートラインから、犯罪被害者等早期支援団体・山口被害者支援センターへ
辻 龍雄
tatsuo-tsuji@mx81.tiki.ne.jp
約10年ぶりにハートラインやまぐちの活動に参加することになった。これまでの理事が全員退陣され、私はその補充要員である。
(犯罪)被害者支援センターは、全国各地に48団体が民間団体として設立されている。「民間」という呼称はあるが、実際には国家としての施策であり、各地の県警本部の犯罪被害者支援室と密接に連携している。
昨年、「NPO法人ハートラインやまぐち」は、「NPO法人山口被害者支援センター」に変わった。さらに、今年3月、山口被害者支援センターは、公安委員会から「犯罪被害者等早期支援団体」に指定された。これによって、名称だけでなく、業務内容も、従来とは、まったく変わった。
どのように変わったかというと、「不特定の被害者からの相談電話を待つ状態」から「県警本部から次々に紹介されてくる状態」になったのである。
紹介されてくる人たちの状況は、重罪事件や交通死亡事故の被害者や遺族であり、極めて深刻である。業務は電話による相談業務から、被害者と顔を合わせ、訴訟の経過手順や犯罪被害者給付金制度などの情報提供を行い、裁判所、検察庁等へ行動を共にする動きのあるものになった。
平成23年度の山口被害者支援センターの取り扱い件数は179件。その対応結果をみると、92.2%(165件)が「相談のみ」、「他機関への引き継ぎ・紹介」、「その他」である。被害者と接点のある活動は、わずか7.8%(14件)であった。その内訳は、カウンセリングは1件、法律相談3件、裁判所同行などの直接的支援10件である。
犯罪被害者支援活動は、(1)Emotional support、(2)Information、(3)Practical helpに大別される。これまでは被害者からの電話相談に応じる受動的な形での(1)心理面の支援と、(2)情報提供が主な活動であった。これからは、こちらから被害者へ電話し、(2)情報提供を行い、(3)行動を伴うことになる。対応の結果からみると、これまでのハートラインは受動的で、Emotional supportに偏った支援活動であったといえる。
私たちサポートネットの活動を振り返ると、単なる電話相談ではない。DV被害者から要請があれば、直接的に動き、我々のシェルターに緊急一時保護する。自立に向けてのきめ細かい支援をする。さらに、学術的にも、活動から得た知見や課題を国内全国学会で3度口演報告し、国際学会でも2回口演報告を行った。過去3年間連続で査読論文として日本セーフティプロモーション学会誌上に公表している。
活動は客観的に検証し、成果や課題を明らかにしなければ進歩はないと思う。山口被害者支援センターには、活動報告書の作成や、学術活動も求められるのではないだろうか。そうした活動は、これから先の事件や事故の予防につながる