ニュースレター29号
2016/08/08
平成27年度事業報告
5月29日に総会を開きました。事業を継続して14年経ちました。
■ 相談事業は176件と少なかったですが、紹介元は、弁護士事務所、インターネット検索、よりそいホットライン、人の紹介などで内容はとても深刻なものが多かったです。
■ 自立支援事業として自助グループを9回開催しました。また、相談事業で深刻な内容の場合は面接をしています。また、シェルターを退所した人で、警察や行政、弁護士事務所などへの同行や面接をしています。場合によっては、関係部署とのケース会議を開催することも多くなりました。行政の面接に同席というようなこともあります。139回行いました。
■ シェルター事業は、入所者が2月ごろから多くなり、シェルター2室、ステップハウス2室も満室になることも多くなりました。入所者の紹介元は警察署、配偶者等暴力相談支援センター、生活サポートセンターなどです。ステップハウスも含めて6家族の対応をしました。自立が難しく5か月の入所が長引いたケースもあります。それぞれのケースに応じて同行や面接などのサポートを96回しています。
自立支援事業とシェルター事業を兼ねて関係した団体や行政の部署をリストアップすると人それぞれに関係する部署が違いますので、いろいろなところに関係していることがわかります。人ひとりが生活を立て直すためには、市役所中を歩き回らねばなりません。普通の生活では何気なく、それぞれの課に行っていると思いますが、それを短期間で手続きをしていくので、かなりの時間とエネルギーを要します。住民票や戸籍謄本がいろいろなところで必要になっていきます。再出発のお手伝いをしていますが、一人ではとても辛いだろうと思います。
■ 広報啓発事業では、ニューズレターを2回発行しています。デートDV防止教育として
11校2120人に授業をしてきました。中学校、高等学校、短期大学、大学に行きました。
DVやデートDVの支配の構造について、さらにその対応について熱心に学んでくれました。大人向けのDV講座に5団体の講師として行きました。
相談員のスキルアップのために、全国女性シェルターシンポジウムに参加しました。また、山口県男女共同参画相談センター主催の研修会には相談員総出で参加しました。
■ 上記のような事業をしてきましたが、事業内容は年々充実してきています。14年の経験は何にも代え難いものです。支援経験の蓄積もできてきました。民間ですのでサポート内容の制限はありません。想像と創造で様々な対応ができます。しかし、悲しいことに財政的に非常に厳しい状況には変わりがありません。相談員の人件費が全く出せません。今年度の総会でもどう経営的に安定させるかという意見が出ました。
そんな中でも新しい相談員が2名加わってくれました。相談員の高齢化にストップができました。
シェルターからの報告
この春から立て続けに入所者がありました。皆様から頂いた食料は入所者に提供しています。「米がたくさんあったので入所中は安心してシェルターに居ることができた」と、Aさんは言っていました。時には、調理して提供することもあります。そして退所時は、皆様から頂いた家電や家具、調理器具、食器等は再出発するためにとても活躍しました。カーテン、冷蔵庫、電子レンジ、ガス台、洗濯機、掃除機、テレビ、寝具類、テーブル、こたつ、鍋、フライパン、やかん、食器、箸などを提供しました。
Aさん、Bさん、Cさんに皆様から頂いた物を渡しました。その結果、これまで皆様から頂いたストックがほとんどなくなってしまいました。布団も足りず、急きょスタッフの家の布団を持ち出しました。提供したAさん、Bさん、Cさんや子どもたちは加害者のいない家で安全に暮らすことができています。皆様のご協力に感謝しておられます。
「次期通常国会で性犯罪親告罪撤廃」の読売新聞記事 辻龍雄
性犯罪は刑事訴訟を起こすことが難しい状況がある。その理由の(1)は、強姦罪の時効が平成12年まで6ヵ月であったこと。その(2)は、強姦罪は親告罪であること。そのため、刑事告訴をあきらめ、民事訴訟をはじめた被害者は多いと思う。加害者の処罰は被害者の回復に必要なものだが、民事訴訟では被害者の処罰感情は十分に満たされないように思う。
幸い、性犯罪の法律は先人たちの努力で次々に改善されている。まず、平成12年に時効6ヵ月が撤廃された。そのきっかけは全国の警察本部に設置されたレディース110番への相談者が事件から10年以上経過してようやく相談していること、事件から長い歳月が経過しているのに、被害者の心的被害が甚大であることが明らかになったことが契機となったという。
2つ目の親告罪の問題。親告罪とした理由は、犯罪の性質上、起訴によって事実が公になると被害者の名誉が害され、精神的苦痛等の不利益が増すことが多いという理由と解されている。しかしながら、被害者が告訴するか否かの判断を自分で決めることは難しい。告訴しないことを選択する被害者は多く、これが加害者に成功体験を持たせてしまい、性犯罪者が性犯罪常習者と化して犯行を重ねていく。
親告罪撤廃の動きは、内閣府から始まった。平成24年7月10日の毎日新聞記事をみると「強姦親告罪から除外を 内閣府男女共同参画局法改正を求め報告書」の記事がある。文中に「被害者の名誉やプライバシーを守る観点から、刑法は強姦罪を親告罪と定めているが、被害者自身が告訴を判断するため精神的に思い負担を強いられたり、被害者が子どもや知的障害者の場合は、裁判で告訴能力を否定される例もあり、関係者から泣き寝入りにつながると指摘されていた」とある。この報告書を受けて法務省刑事局は検討材料として考慮すると回答している。
2年後の平成26年10月から平成27年8月まで、法務省で性犯罪の罰則に関する検討会が12回開催され報告書をまとめた。それから1年後の平成28年6月16日に法相の諮問機関である法制審議会の部会は、今秋以降の通常国会に刑法改正案を提出するという。
平成28年6月17日の読売新聞記事「性犯罪厳罰化まとまる 法制審部会 被害女性ら歓迎の声」をみると、法制審議会の部会がまとめた答申案の主な内容は(1)強姦罪、強制わいせつ罪などの起訴に被害者の告訴を必要とする「親告罪」規定を撤廃する。(2)法定刑の下限を強姦罪で3年から5年、強姦致死罪で5年から6年に引き上げ。(3)同居の父母などが優位な立場を利用し、18歳未満の子供に対して性交したり、わいせつ行為をしたりした場合の罪を新設。(4)強姦罪の被害者を女性に限定した規定を見直す。
私がこうした問題にかかわって20年が経つが、時代はいい方向に向かっている。