ニュースレター 30号
2017/01/18
寒中お見舞い申し上げます
いつも皆様の温かいご支援に感謝しております。
まずシェルターの実情からお話しましょう。
昨年4月から入所者が相次ぎ、12月末までに保護した人達は15家族32人です。現在シェルター、ステップハウスとして4室あります。それぞれ171日、159日、218日、113日の利用がありました。別件で、シェルターが満室で利用できないため、市営住宅の目的外で保護できた1家族2人があります。
入所者の当法人への紹介元は警察7件、自治体2件、弁護士2件、児童相談所1件、犯罪被害者支援センター1件、生活サポートセンター1件、元自治体相談員1件、インターネット1件でした。自分で探したという例は少ないです。
保護命令は2件発令され、1件却下、取下げ1件でした。
NPO法人山口女性サポートネットワークの証明で自治体の支援措置を受けられるケースも出てきました。少しずつですが、自治体の様々な部署や外部の組織との連携ができつつあります。
ただ、今心配していることは、離婚調停や裁判時に、母親と一緒に出た子どもが父親との面会交流を求められるという動きがあることです。
円満な離婚では親権がない親への面会は子どもの成長上非常に重要なことだと思われます。しかし、DV家庭での子どもは児童虐待法でDVを見ることすら虐待(面前DV)であるといわれています。子が虐待をした親に面会することは非常に緊張を強いられます。子どもへの影響についていつも考えさせられます。
【赤い羽根テーマ募金へのご協力のお願い】
山口県共同募金会では、山口県内の社会課題または地域課題を解決する必要性を県民にアピールするために「赤い羽根テーマ募金」が設立されました。山口女性サポートネットワークは万年資金不足に悩んできました。助成金にこれまで応募してきましたが、新たな事業を展開せねばならず、本来事業に影響を与えることが多かったです。また、助成金が採用される保証はありません。そこで、山口県共同募金会の「赤い羽根テーマ募金」に応募することにしました。これは、山口女性サポートネットワークの募金に振り込んでいただきますと、山口女性サポートネットワークに寄付されるというものです。また、税制上の優遇措置もあります。期間は平成29年1月から3月31日までです。それ以外の期間に寄付されますと、赤い羽根共同募金会への寄付となります。
シェルターからの報告
今年度はたくさんの方から多くの物品をいただきました。4部屋のシェルターとステップハウスにすべて家電を入れることができました。また、シェルターから出る人達に冷蔵庫、電子レンジ、ガスレンジ、テレビ、掃除機、調理器具、食器棚、食器、布団などをあるだけプレゼントできました。シェルターに入った人は家電が整っているのにとても驚かれます。また、退所するときに家電等のプレゼントができると新生活への出費を抑えることができます。多くの人達が家電の持ち出しができないことが多いのでとても助かります。
また、米や菓子などの食料品も頂きましたので、入所者や退所したけれど生活がまだ安定していない20家族近くに盆前と年末にプレゼントしました。ちょうど米がなかったという声がたくさんありました。
「被害形態」、「犯行形態」の分析と検証、それによる「被害回避の方法」
辻 龍雄
2002年1月に本団体を立ち上げて、今日に至るまで中核となるメンバーは変わらず、支援(サポート)活動の熟練度は磨きがかけられている。行政や警察との連携も緊密になってきた。賛助会員として長年にわたり経済的な支援をして下さる方々の顔触れも変わらない。最近は家電・家具などの生活支援物資のご寄付が増え、自立支援活動に使わせて頂いている。本当に有り難いことだと思う。
時代の流れをみると、1998年(平成10年)頃から、被害者支援センター(警察庁)、男女共同参画センター(県)、民間ではDVシェルターが各地に次々に設立されていった。この最近は内閣府の主導で性暴力被害者ワンストップ支援センターが設置されつつある。
この10数年間は、「官」と「民」が、DV・性暴力被害者に対して、全国規模で組織的な支援(サポート)活動を始めた時代といえる。さらに、ボランティア活動として被害者支援活動に取り組む人たちも増えている。20年前と比べれば、被害者支援(サポート)に関わる人間の数は、どれほど増えたか想像もつかない。平成7年に山口県で初めて性暴力のセミナーを開催した際の参加者はわずか10名前後であった。それが昨年末に被害者支援センターが主催したDV・性暴力被害者3名による講演会は、ホテルの大ホールの席が足りなくなる盛況ぶりで、警察学校学生等の動員もなかった。
こうした時代の流れにより、かつては、偶然に事件・事例に関わった個人、もしくは問題意識を強く持った女性グループや女性弁護士たちの、いわば、「個人的な」被害者支援(サポート)活動が、「組織化」されて団体・法人として対応する時代になっている。被害者の支援(サポート)活動が「個」から「組織」へと変化しているように思う。さらに、法律も、DV・性暴力・ストーカーに関連して次々に整備されている。
だが、その一方でDV・性暴力被害に取り組む研究者の数は、日本国内では数えることができる少なさである。「被害形態」、「犯行形態」の分析と検証、それによる「被害回避の方法」についての研究がなかなか進まない。
研究者の数の少なさに加えて、それを公表できる学会が少ないこと、支援(サポート)活動をしている人たちの興味の薄さも、この分野の研究活動が進まない一因のような気がする。被害者支援センター、男女共同参画センター、民間シェルターには、膨大な量の詳細なDV被害者の個別データがあるが、これが研究目的であっても個人情報保護の建前から、日本では研究者に公表されることはないだろう。白書やネット上に公開されている差しさわりのない範囲の被害者の人数、年齢等々の基礎的なデータだけが入手可能だが、それでは、「被害形態」、「犯行形態」を分析するのは極めて困難で、「被害回避の方法」を検証するには十分ではない。
年末の講演会で講演された被害者の方々は、不思議な言い方だけど、全国的に有名な被害者の方々で、全国各地で講演活動をされている。現在の国の方針は、被害者の声を直接聞いて、被害者を理解してほしいという初期の啓発活動の段階にあるように思うが、もう10数年たっているんだから、被害者の被害体験を次の被害者をださないために、どう活用すればいいのか、「被害形態」、「犯行形態」の分析と検証、それによる「被害回避の方法」を模索する段階になってほしい。