ニュースレターNo.2
2002/09/01
No.2
(1)全国シェルターシンポジウム 大阪2002
~みんなで生かそうDV防止法~
〈プログラム〉
*基調講演 「民間シェルターのネットワークと行政の連携~オーストラリアの先例に学ぶ
ジュリー・オペリン(WESNET議長)
*パネルディスカッション「使いこなそう!DV防止法~民間と行政のパートナーシップ~」
三井マリ子(すてっぷ館長)、石田法子(弁護士)、近藤恵子(北海道SN事務局長)、小野設子(大阪府自立支援課)
*分科会1)DV防止法の3年後の見直しに向けて
2)DVサポートスタンダードをつくろう
3)地域につくろう!民間シェルター
4)在住外国人へのサポート
5)サポーターのためのセルフケア
6)被害体験を持つ子どものケア
7)民間シェルターと行政女性センター等との協働
① 報告 DV法の実施と全国のシェルター活動の動き
6月29日(於:クレオ大阪中央)、6月30日(於:ドーンセンター) の両日、全国女性シェルター・ネット主催(共催:財団法人大阪府男女協働社会づくり財団)の全国シンポジウムが開催されました。この大会は、1998年に第1回大会が札幌で開催されて以降、新潟、東京、旭川と毎年引き継がれ今回で5回目を迎えるものです。本会員の6名が情報蒐集と自己研修のために参加し、 8月25日に研修会報告を開いて学習成果を共有しました。
まず基調講演では、オーストラリアのWESNET(女性のためのサービスネットワーク)議長のジュリー・オペリンさんが、当該国における状況についてお話になりました。オーストラリアでも、3人に一人は暴力の被害を受けています。しかし日本と同じように、まだまだDVは「暗く、プライベートな問題」として扱われ、警察への通報率はまだ低いようです。表面化している被害者は21~23歳の比較的若い女性が多いそうです。1974年に民間がシェルターを開設した後、メディアが取り上げ、社会問題化しました。その後、フェミニストを中心に積極的なロビー活動をした結果、政府が300万ドルを投入し、9カ所のシェルターを開設し、立法改革がなされたという歴史を持っています。DVはスタッフの労働と賃金の確保など、社会的コストが大きいので、行政のバックアップが不可欠であると強調されていました。
さて、DV防止法が施行されてから、どう変わったのでしょうか。パネルディスカッションでは、この点について話し合われました。司法関係では、裁判官のみならず電話交換手まで教育がなされるなど、保護命令に関する認識が高まり、対応の改善が見られるようです。特に、警察の担当課職員の意識の変化が大きく、大阪市では行政対応窓口が増えて利用しやすくなったことも、大きな変化としてあげられます。
しかし、問題点・課題としては、DV法では被害者の範囲が限られるため、事例によってはさらなる凶器となる場合もでてきました。また、禁止行為として電話、携帯電話は制限されていないという問題もあります。ストーカー法では制限されているのに、何故か、という指摘もありました。さらに、接見禁止の期間が短すぎるので、延長を検討する必要もあります。その他、DVの規定範囲の拡大や誓約書の廃止、調停での危険性、官民の協力システムの確立と資金援助の充実の必要性の声もあがっていました。
これらの問題解決のためには、具体的なケースの積み上げにより、課題を明確化し、DV法を作り替えていく必要があります。法律扶助を利用するなどして弁護士を活用し、援助実績を積むこと、また、予防・教育プログラムを充実させることも必要でしょう。
DV法の見直し時期に向け、日々の地道な活動を通して行政との連携を積み重ねることで、パートナーシップを育んでいきたいと思います。
② 第2分科会報告 DVサポートスタンダードをつくろう
おんなのスペース・おんの近藤恵子さんが、DVサポートスタンダードの必要性、理念、DVサポートの具体的な手順と内容、民間シェルターサポートの特徴、そしてDV防止のための啓発教育活動について話され、DVサポートスタンダードをつくろうと発案提議をしました。
北海道シェルターネットワーク代表からは保護命令を再度申し立てたという事例から、接近禁止・保護命令の期間が短いという報告と、シェルターで共同生活できない方を母子寮に入れて頂いたというシェルターサポートの実際から、どこまでサポートできるのかというシェルターの限界について話されました。
「北海道SN代表」からは、保護命令を再度申し立てたという事例から、接近禁止・保護命令の期間が短いという報告と、シェルターで共同生活できない方を母子寮に入れていただいたという事例から、どこまでサポートできるのかというシェルターの限界について話されました。
参加者からは、DV防止法制定後「婦人相談所が支援センターになり、DV以外扱わなくなってきて、本来の婦人相談所の機能をしていない」「今までのシェルターへの補助金が削減されて財政を圧迫している」という指摘がありました。
また「DV防止法制定後、公的機関からケースを回された時は民間委託の事業費がもらえるが、シェルターに直接来た人の委託料はもらえないがどうしたらよいか」という質問には、「DV防止法26条で、民間を支援することが明記されているのだから、民間シェルターの方が決定権を持つべきで、行政に請求しなければならない。」と話され「このように具体的な事例にそって、シェルタースタンダードの必要性を論議する必要がある」と訴えられました。
③ 第5分科会報告 サポーターのためのセルフケア
やりたいこと、しなければと思うことも多々ありますが、私個人ではどうにもならないと。すぐ諦めがちです。しかし、暴力に対して、理解し、被害者救済のために一生懸命闘っている人々が会場にあふれ、なんだか嬉しくなりました。
分科会では、当事者との関わり方や援助方法、安全に安心して働ける条件の整備などについて話し合いました。サポーターの学習会や話し合いの場の必要性、出来ることと出来ないことをはっきりさせて関わること。また燃え尽きないようにストレスをためない工夫として、カウンセリングを受けたり、旅行・食事会・演劇鑑賞など心身のリフレッシュの必要があること、何よりも差歩^田^自信が自分を大切にすることの重要性などがあがりました。健康で経済的保証があれば、ゆとりを持って援助できます。自立援助のための社会資源の整備や信頼できるスタッフ仲間が不可欠だということでした。
④ 第6分科会報告 被害体験を持つ子どものケア
DV被害者の子どもは目に見えない心の傷を受けます。誰にどんなふうに傷つけられたかで、心の傷が違ってきます。守ってくれなかった大人への不信感も生まれるのです。保護された子どもたちをケアする職員の目安の一つは、幼児や小学生の場合「おねしょ」をすることだそうです。大阪府児童相談所の富田さんのケース報告は、生々しいものばかりでした。そんな中で、一人ずつ丁寧に自立援助の努力がなされている様子を知りました。
参加者の高校教師や保育士さんから、子どものシグナルを見つけて、児童相談所やシェルターへ繋げている報告があり、シェルターがあるとスムーズに問題解決できたと発表されました。
ケースを成功させるには、頭半分は子どもと同じ年齢になり、半分は冷静に判断をすることが大切です。
(2)知的障害の女性への12年間に及ぶ性的・身体的虐待(第2弾)辻 龍雄
平成14年5月7日、知的障害者を雇用していた事業主は準強姦罪、妻は傷害罪で逮捕されました.裁判は7月10日に山口地裁で開始され、同日KRYテレビニュースで報道されました。
裁判で明らかになったのは、小学6年から12年間ではなく、小学5年から14年間に及ぶ性的・身体的虐待、そして、職親制度を悪用し被害女性への給与と公的資金援助を流用していた事実。事業主夫妻は容疑事実を認め争うことはしませんでした.事業主は10月2日午後3時30分、妻は9月12日午後4時30分に山口地裁で判決申渡しが行なわれます。
8月21日の事業主の裁判を傍聴しました。2名の証人がでました。一人は減刑嘆願書を集めた被告の友人。検察官から「逮捕の罪状は知っているのですか」と質問され、「今、法廷前の掲示を見て強姦と知りました。」と回答。もう一人は被告の息子。「逮捕されたはじめて事件を知った。両親を監督し二度とこのようなことはさせない。」これに対して、同居していた頃でさえ気がつかなかったのに、どうして監督できるというのか、という質問が検察官からなされました。
最後に、被告発言。その趣旨は「家族のように可愛がっているうちに、このようなことになった.知的障害者に仕事を教えるのは大変な根気がいる。つい殴るようになってしまった。職親制度の資金補助は流用した。」なお、被告は社会福祉協議会会長賞の受賞歴があり、社会福祉推進員でもあります。
裁判官から「あなたのしてきたことは、家族にすることではない。知的障害者に仕事を教えるのに根気がいるのはわかるが、暴力をふるっていいというものではない。」という趣旨の発言がありました。検察官は、長時間にわたり知的障害者の女性を、労力の確保とゆがんだ欲望の対象としてきたことは卑劣で悪質な行為と断じて、懲役7年を求刑しました。
知的障害者虐待の事件化は、日本の司法システムでは極めて困難です。山口県警・山口地裁による今回の逮捕は、同じような状況下にある人たちにとって大変な朗報ではないでしょうか。判決時に全国的に報道されることを期待しています。
(3)活動日誌 2002.5~8
*月例会を除く
4/ 6 下関支部「下関女性ネットワーク」に加入
4/21 山口女性サポートネットワーク総会
5/ 7 平成13年度赤い羽根助成金会計報告提出
5/29 山口県男女共同参画課、来所(シェルター見学)
6/ 5 アジア女性基金より自立活動支援金決定通知
6/18 山口県警との打合せ、被害者付添い
6/20~23 下関女性ネットワークで下関支部パネル展示参加
6/29~30 全国シェルター会議参加
7/10 山口県男女共同参画課、来所(自助グループについて)
7/6~7 フェミニストカウンセリング養成講座開催(第1回)
8/3~4 フェミニストカウンセリング養成講座開催(第2回)
8/4~27 A県より1家族をシェルターに保護、その後、県警、消費者相談センター、
男女共同参画相談センター、山口精神保健センター、弁護士と連携する
8/3 NPO法人申請終了
8/25 全国シェルター会議報告会