ニュースレターNo.5
2004/08/01
No.5
目次
(1)期待される「配偶者からの暴力防止及び被害者の保護に関する法律」の改正
(2)フェミニストカウンセラー養成講座を受講して
(3)DV被害者支援フォーラムより
(4)妻を殴る男は子供も殴る
(5)活動日誌
(1)期待される「配偶者からの暴力防止及び被害者の保護に関する法律」の改正
山口女性サポートネットワーク
代表 小柴 久子
毎日暑い日が続いていますが、みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
最近のテレビニュースを見るたびに、心を痛めつけられるような事件が続出しています。これらの事件の多くが、背後に潜むDVを感じてしまいます。DV家庭での暴力の連鎖、子どもの心の成長に大きな影響を与えていることなどを知るにつれて、DVが社会のなかでいかに大きな影響を与えているかを痛感させられます。
そんななかでも少し朗報があります。当サポートネットでは、DV被害者の自助グループの立ち上げにむけて昨年の12月から取り組んできましたが、やっとこの3月末に立ち上げることができました。この作業に立ちあってみて、心を分かち合える仲間や安心して自分の状況を話すことができる場がどんなに必要か、孤立した日々にそれが存在することがどれだけ支えになっているかを教えられました。まだ一地域にできただけですが、今後、この自助グループから輪が広がって、たくさんの自助グループができることを期待しています。
それともう一点は、かねてからDV法の見直しが検討されていましたが、3月に参議院に上程された「配偶者からの暴力防止及び被害者の保護に関する法律の一部を改正する法律」が5月に衆議院を通過し、6月2日に公布されました。
その主な内容を今回は取上げてみます。
1.「配偶者からの暴力」定議が、身体に対する暴力に限られていたが、「心身に有害な影響を及ぼす言動」が加わる。2.接近禁止の対象が、被害者と同居している当該子にも発することができるようになる。3.退去命令においても、退去住居付近のはいかいも禁止するものになる。4.退去命令期間が、2週間から 2月間に拡大。5.退去命令の再度申し立てを認められる。6.その他 市町村の施設でも暴力相談支援センターとしての機能を認める。自立促進のために就業の促進、住宅の確保、援護等に関する制度の利用。福祉事務所の役割の明示。施行後3年後の検討する。公布から6月後に施行する。 (参議院法案要旨より抜粋)
支援者の被害も続出している中で、支援者保護が加えられていないこと等の問題点はありますが、これまでの法律と比べて被害者や子どもたちの人権が守られたものになりました。 一歩一歩、確実に充実することを願うばかりです。
(2)フェミニストカウンセラー養成講座を受講して
1.「知ろう」としてくれるこの快感?
加藤先生の「文章完成テスト(SCT)」が3ヶ月かけて終了した。最初、「ずいぶんゆっくりと時間をかけてやるのだなあ」と思ったが、終わってみてその意味が少し分ったような気がしている。一人のテストを約30分かけて紹介し、聴いている聴衆も質問し、だんだんその人の人物像が見えてくる。最後に本人が名乗りを挙げ、「実は…」と話す。
本人の話を聞くと、当たっていたところもたくさんあるが、ちょっと違っていたなあと思うところもあり興味深かった。自分の中の思い込み、自分の経験と重なってしまって、ブロッキングされていた部分も多く感じた。
一人の人間の人生を聴こうとした時、いかに自分自身が純粋な状態でいられるか。ちょっとした一言の中に隠されている苦しみや悲しみ。そうしたことを、終わってみてしみじみと味わっている。
また、人前で自分が感じたことをまとめて話すということの難しさも経験した。自分一人で読んで感じることはできる。でも、それを聴衆と共有してだんだんまとめていくのは慣れないだけに難しかった。自分だけの感情ではなく、目の前にいる人々と共感したり心を通わせたりしながらだんだん人物像に近づいていく。とてもいい経験ができたと思う。
最後に、私自身のことを一人の人が一生懸命に「知ろう」としてくれたことの快感?これも嬉しく経験できた。私が言って欲しかった「言葉」をたくさん言ってもらえた。それは、自分の中で認めている言葉であっても、第三者に言ってもらえることの喜びである。皆さんの意見を聞いて、自分でも「あっ」と驚くような部分もあった。何気なく急いで書いた文章完成テストだが、かなり自分の本質や問題点が浮き彫りになっている。自分のSCTが発表された日、家路についた車の中で私は暖かい気持ちになっていた
2.刺激的な経験
私という人間を、他人が「こんな人だろう」と推測しながら紹介してくれる。これは、嬉しいような、恥ずかしいような、刺激的な経験でした。私という人間が他人の眼には、どんな風に写って見えるのかとても興味がありました。しかし、反面、自分の知らない自分がいるということを受け入れなくてはならない訳ですから少し覚悟が必要だったかもしれません。
一方、私が紹介する人をいろいろと想像するのに解釈していく上で困ったことは、書いてあるままを素直に捉えるかその裏の部分を推測するのか、またその推測をする時にプラスに捉えるかマイナスに捉えるか、答えがたくさんあるということでした。分析をするという作業の難しさと責任の重さを思い知らされました。
他の受講者の発表を聞いて感じたことは、マイナスな記述がたくさんある人の紹介をした人は、紹介されるほうもするほうもたくさんエネルギーが必要だったと思います。しかし、紹介された人はどの人も、受講生の人に聴いてもらえたことが、「嫌な気持ち」と答える人はいませんでした。自分自身の辛い経験をこの場に出すことで、似たような経験をしてきた人の辛い部分までも一緒に癒されていったように感じました。改めて話を聴いてもらうということの偉大さ、共感するということの素晴らしさを感じました。
3.「心を開く」ことの大切さ
初めて講座に参加させていただきました。文章完成テストに書かれた内容で.その方の性格を読み、分析していくという体験は初めてだったので、とまどいましたが、一人一人の人生の中に、さまざまな悲しみ、怒り、数え切れない辛さを持っていて、それを乗り越えて生きておられることに感動しました。
また、会って間もない、しかもお互いの事をまだ何も知らないままに自分の性格を分析され、意見が出され、少し不安でもありましたが、不思議と、自分が分析されている時、何か安心するものがありました。そこにいる方々との見えない信頼関係が自然にできていたのではないかと感じました。だからこそ、お互いの悩みや心の内を打ち明けられたのだと思います。「心を開く」ことの大切さを勉強したと思いました。
現在の社会では、精神科や心療内科に行くという事も躊躇してしまいがちですが、小さな悩みでも気軽に心のケアを受けに行ける社会になればいいなと願っていますし、これからの社会に必ず必要になってくると思います。
お身内を亡くされた方、心の痛みは計り知れませんが、いつもニコニコされていて、そんな辛い経験をされたなどとは思いもよらない程、はつらつと生きていらっしゃる方の話を聞くと、自分も頑張らねばと思ってしまいました。辛いことがあっても、共感や理解、受容で心は軽くなるんだなあと感じました。
まだまだ勉強中ですが、これからも頑張っていきたいと思います。
4.自分の事を知り、自分のことを話してもらって
自分自身の事は、娘の自殺から丸9年たって、すごくすごく色んなことをして、やっとみんなの前に出られるようになれるほど、身も心も軽くなり整理できていたと思っていたが、また、も重く否定的な自分が出てびっくりしました。
でも、これって9年前からではなく、昔からこんな物の捉え方をしていた自分のような気がしています。人の事も同じ捉え方をしてしまっている。イメージは
つかめるが具体的に表現ができない。
今回の人たちは、仕事に生きがいを持っている方が多く、私の世界は狭いなあとつくづく思いました。
5.悲しみの中から学ぶ
人は悲しい出来事や、辛い体験の中からたくさんの事を学び、他人に対しても共に共感できるのだと思います。他人の内面を知る事は、自分の内面を知る作業をしてから始めるべきなのかもしれません。
たくさんの出会いの中で、それを勉強していかなければならないと思っております。
6.児童家庭相談でもつかってみたい
4月から、ある児童家庭支援センターで相談員として仕事をはじめた。学校に行けない、発達障害が合って多動でどう育てたらよいかわからない、子どもが育てられない、子どもが言うことを聞かないので叩いてしまう、子どもが勉強しない、父親が手伝ってくれない、父親の性的虐待までさまざまな内容の相談電話がかかってくる。
子育ては女のする仕事、女だから子どもが育てられるのは当たり前といった考えのなかで、自分を苦しめ、悩む女性がほとんどである。なかには現状から逃げ出す人もあり、その時は祖母が相談をされる。その裏には女性問題が潜んでおり、自分が具体的にどう行動してよいか見出せない人たちが多い。
私たちは、ひとりひとり育った環境が違い、能力が違い、相手があり、社会現象も日々変わっていく。その中で課題が発生し、どう対応したらよいか、悩みはみんな違ってくる。
しかし、それぞれの立場で、自らが前向きに取り組んでもらいたいものだと思う。そのためには、相談を受ける者も、ともに見つけ出す作業が必要になる。
フェミニストカウンセリングでは、SCTによる自己紹介、その読み取りが取り上げられた。相談者に面接する時、この手法が使えないかなと思った。
人はその時の状況によって、微妙に動くし、表現の仕方で解釈も変わってくるが、まず自分を表現してみることが自分を知る第一歩のように思う。自分が言葉で表現出来ないといけないが、一度ゆっくり時間が取れたら書いてもらいたいと思った。
(3)DV被害者支援フォーラムより
6月18日(金)カリエンテ山口において、DV被害者支援フォーラムが開催され、精神科医の竹下小夜子さんが「DV被害者心の叫び」~DVの本質と構造を理解していただくために~と題して講演されました。
DVの本質は、「対等で平等な関係に反して、脅しや威嚇など、パワーによるパートナーへの管理支配が行われるのがDVで、これは意図的で作為的なものであり、怒りをコントロールできないから暴力をふるうのではなく、対人関係の問題ではありません。つまり、DVは、加害者の管理・支配・所有意識から加害者自身が選択したパワーとコントロールそのものです。加害者の多くは、コミュニケーショントレーニングなど必要のない人たちです。」ということでした。
また、「被害者支援者は被害者女性へ『あなたは悪くない』と確信を持って言えるかどうかがとても重要です。そのためには、様々なDV神話や思い込みを知り、それに対して持つべきジェンダーに敏感な視点を養うことが必要です。
精神科医としての臨床の経験から、『専門』知識の偏った知識として、よく『虐待の連鎖』といわれているが、自分が虐待されたからといって子どもに虐待をするのは1/3から1/5の少数派で、大多数は、『あのようにだけはなるまい』と、ましな親を選びとって生きており、これは、虐待を受けた子が『自分は親にはなれない』と思うようになる、という2次被害を与えてしまうことにつながってしまうことになります。
また、無責任で愚かな親は厳然として存在するが、そのような愚かな親が子どもの問題で悩み、「専門家」の支援を求めることは、まずありません。子どもの問題で悩んで「専門家」に支援を求めてくるのは、子どもに愛情も関心も持つ親。そのような親を責めさいなむ見方は、現場で役に立たないどころか、回復と支援を困難にさせていることが少なくありません。そして、臨床の一般的な手法は、今現在の問題を生い立ちや親子関係などから「因果関係」として解釈・説明しようとするが、現実には、私たちの人生は、過去の因果関係だけに無力に縛り付けられているわけではありません。人は過去に縛られるほど無力ではないし、将来の人生を選ぶ力を持っています。」と指摘されました。
そして、「臨床家アリス・ミラーが『誰かひとりでもいい。その人の本当の気持ちを理解し、受け止めてくれる誰かがいてくれるかどうか、それが決定的な違いをうむ。』と指摘していますが、誰でも、この決定的な誰か一人になり得ること。そして、沖縄県でも、加害者プログラムへ予算が計上されていますが、今の暴力の現状では、被害者の安全確保こそが最優先の課題で、被害者の安全確保がない加害者教育への取り組みは、危険な状況を長引かせてしまいかねない。被害者支援のためには、必要な情報提供の標準化が必要です。」と示唆されました。
その後、相談窓口より現状報告と全体討議が開催され、山口県男女共同参画センター相談員、山口地方法務局女性の人権ホットライン人権擁護委員、山口県福祉総合支援センター相談員、山口女性サポートネットワーク代表、山口県警察本部生活安全企画課課長補佐の報告がありました。
会場からは、警察本部へ被害者の搬送について、「県警では、被害者保護の立場から被害者を搬送するということだったが、市町村で対応が違う。」という質問があり、「市町村間の温度差があるのは事実だが、指導していく。」ということでした。
(澤田寿子)
(4)妻を殴る男は子供も殴る
辻 龍雄
女性への暴力の背後には、児童虐待が存在します。この1月、私はDVに伴う児童虐待を児童相談所へ通報しました。以下は、折り返しの児童相談所の児童福祉司からの電話の趣旨です。
「その家族の地域を受け持つ保健婦に連絡したら、頼みもしないのに、すぐにその家に行ってね。子供たちには怪我はなかったそうなんだ。母親からも何の訴えもなかったと言うしね。それでね、一体どういうことなのか、通報してきた辻さんに事情を聞こうと思ってね・・・。それで、電話したんだけどね、どういうことなのかね?・・・」。
児童相談所とはいえ、会ったこともない人からのタメ口の電話。形式的な調査結果をもとにした通報者を疑うような口ぶり。私は反論しました。
「その言葉遣いはなにか? 電話していて頭にくる」。「頼みもしないのに保健婦が行ったとはなにか?」。「いつも怪我をしていなければ児童虐待ではないのか?」。「いきなり来た初対面の保健婦に夫が子供を殴っていると言えるとでも思っているのか?」。この人は本当に児童虐待の専門家なのか? という疑問がでました。
佐々木あけみ県会議員に、児童相談所の児童福祉司について一般質問をお願いしました。
平成16年3月4日の山口県議会議事録からの引用です。
“児童虐待に取り組む児童福祉司は、山口県ではその約2分の1が専門職ではなく一般行政からの任用。一時保護所のある中央児童相談所では7名中5名が、(土木や商工などの)一般行政からの任用”。
つまり、私が、この人は本当に児童虐待の専門家なのか?と疑問に思ったのは、無理もないことのようです。県は研修を強化するという趣旨の回答をしてくれました。
賛助会費のお願い
さて、国も県も膨大な赤字財政にも関わらず、補助金や助成金をさまざまな活動に拠出しています。どうしてこのような収支アンバランスな、滅茶苦茶な予算が出来上がるのかまったく理解できません。先日、子ども会の会合で、市から150万円の助成金をもらおうという話がでました。ごく普通の市民までが、“たかりの構図”に参加しはじめたようです。税金の使い方を間違えているのではないかと思います。
私どもの活動も、助成金の恩恵を受けています。私は、折に触れ、こうした活動は、公の補助金・助成金に依存せず、自分たちで活動資金を確保しようという意見を述べてきました。そうしたいきさつから、私が賛助金をお願いする担当となりました。今回賛助金を2千円から3千円に増額したのも自己資金での運営を目指してのことです。
女性や子供への暴力に取り組む民間シェルター・山口女性サポートネットワークの活動にどうかご理解を頂き、ご支援を宜しくお願い致します。
(5)活動日誌 2003.8~2004.6
*月例会を除く
2003年8月~
8月7日 萩家庭裁判所へ付き添い
8月19日 山口大学医学部精神科受診付き添い
8月30日 宇部市看護協会でDVについての講演
9月20~21日フェミニスト・カウンセラー養成講座
9月22日 国際ソロプチミスト防府から国際ソロプチミスト・アメリカ連盟10000ドル贈呈
10月4~5日バザー
10月8日 DV被害者支援連絡協議会(県警)
10月11日 ポリフォニックフェスタ参加、DV啓発
10月18~19日フェミニスト・カウンセラー養成講座
10月24日 県民活動協同推進事業
11月1~2日 全国シェルターシンポジウム石川
11月15~16日フェミニスト・カウンセラー養成講座
11月18日 岩国市人材養成講座DVについて講演
11月22日 アドボケイト研修会(アミカス)
12月6日/12月14日 サポートグループ開催
12月20~21日フェミニスト・カウンセラー養成講座
2004年1月?
1月10日 サポートグループ開催
1月17~18日フェミニスト・カウンセラー養成講座
1月21日 県男女共同参画課と協議
1月30日 宇部市市民パワー祭実行委員会
2月1日 サポートグループ開催
2月3日 北九州市ムーブ「配偶者からの暴力の加害者に関する調査報告会」
2月8日 宇部市市民パワー祭参加
2月21~22日フェミニスト・カウンセラー養成講座
2月28日 サポートグループ開催
〃 〃 防府市地域リーダーのための研修会DVについて講演
3月14日 サポートグループ開催
3月20~21日フェミニスト・カウンセラー養成講座
3月27日 サポートグループから自助グループに移行
2004年4月~
4月17~18日フェミニスト・カウンセラー養成講座
4月24日自助グループ開催
5月15~16日フェミニスト・カウンセラー養成講座
5月22日 自助グループ
5月23日 総会
5月30日自助グループ
6月6日国際ソロプチミスト防府認証20周年記念
6月18日DV支援ネットワーク 参加
6月19~20日フェミニスト・カウンセラー養成講座
6月24日 柳井市DVについての研修 講師
6月26日自助グループ