ニュースレターNo.7
2005/07/01
No.7
目次
(1)総会を終えて
(2)フェミニストカウンセラー養成講座を修了して・・・
(3)家庭裁判所のDVへの取り組み
(4)活動日誌
(1)総会を終えて
(特)山口女性サポートネットワーク
代表 小柴 久子
早星の候、みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
平成16年度の事業が終わり、6月4日に総会を終えました。16年度も何とか赤字を出さずに終えることができました。皆様のご支援の賜物です。感謝申し上げます。ホットラインを開始してからまる4年経ちました。サポーター達はボランティアで被害者の相談にのってきましたが、ボランティア精神に頼る活動は限界に来ています。せめて、活動に見合うだけの経費を出したいものだと思いながら、なかなか実行できませんでした。16年度はやっと交通費を出すことができましたが、人件費までは出せないのが現状です。力を持ってきたサポーターを繋ぎとめるためにも、人件費の確保は必至です。そのためにも経営的にもうひと踏ん張りしなければなりません。
平成17年度は山口県と一時委託契約を結ぶことができました。当シェルターに入所すると入居料が要りますが、委託者に関しては委託費が国と県から出ますので、入居料を払う必要がありません。また、入所者には様々なサポートが必要ですが、その交通費やサポート料がわずかですが出せます。それと、セキュリティ維持費も県の補助金で賄うことができるようになりました。そういう点では、17年度は、すこし楽になりそうです。一時委託に関しては県議会議員の方々にもご尽力いただきました。大変感謝しています。
昨年12月から改正「配偶者からの暴力防止及び被害者支援に関する法律」が施行されました。この法律が改正されて、保護命令、特に退去命令の取得率が下がっていると言われています。実際山口県の状況もそうでした。下記のように退去命令の取得率が極端に少なくなっています。
山口県の保護命令の取得状況
H16.6~H16.11 H16.12~H17.5 計
接近禁止命令 18 10 28
退去命令 6 2 8
子への接近禁止 8
(山口地方裁判所資料より)
法律ができても、被害者が退去命令の取得に迷う風潮があることがわかります。「DVは犯罪である」、「被害者は守られて当然」という社会にはなかなかなりません。被害者が一時保護されても、自立が困難な理由から加害者のもとに帰ってしまうもの事実です。この法律では、DVの定義に精神的暴力も認められましたが、保護命令取得には一般的な精神的暴力(ひどいPTSDなどは別)では認められません。離婚に関しても婚姻を継続しがたい理由には精神的暴力だけでは認められない現状があります。まだまだ問題は山積しています。
今年度、山口県では、DV基本計画を策定されるようです。私たちもよりよい基本計画が策定されるよう協力、提言していきたいと思っています。
(2)フェミニストカウンセラー養成講座を修了して・・・
平成 15年・16年の2年間にわたるフェミニストカウンセラー養成講座は、月に2日、1回8時間が20回の講座でした。この講座は、フェミニストカウンセリング学会認定カウンセラー資格申請要件の研修歴の一部を満たしており、75%以上の出席で6回のレポート全提出者のみ修了証書が出されました。
2年間のプログラムは、SCT(文章完成テスト)によって自分に気づき、様々な他者の存在を知ることから始まり、基本的な心理学概論講座。セクシュアリティ、DV・性暴力、母娘・子育て、アディクションの個別的課題。そして、自己尊重トレーニング・アサーティブ・トレーニング体験。カウンセリングとは何をするところか?に始まった面接技法の基本講座及びロールプレイによるミニカウンセリング。そして、CR(意識覚醒)グループトレーニングの手法。というように、カウンセリングの場で聴くということの大切さ・難しさ、そしてフェミニストカウンセリングによって女性がエンパワーメントできるための理論及び技術を学ぶことができました。
今回の講座は常に自分を振り返る・自分に気づく作業の連続でした。多くの女性は、家族の中で、他者(夫・子ども・家族)を世話し、その関係を調整する役目を担っています。自分を無しにし、他者を優先することによって「よき妻・よき母・よき嫁」の評価が得られるわけです。自分の要求や自分の感情に蓋をして、他者のために女性たちは最大の努力をしてきました。「自分を大切にできない人は他人を大切にできない」といわれますが、ケア役割・他者優先の女性たちは、「自分を大切にする」ことを置き去りにせざるを得ませんでした。自己尊重トレーニングやアサーティブ・トレーニングを体験してみて、いかに自分を大切にしていないか、今の社会の中で、自分を大切にするということがいかに難しいのか、がよく分かりました。
このようにジェンダー規範に縛られた自分に気づいたり、自分自身を肯定する力を得るためには受講生である他者の存在が欠かせませんでした。また、グループで話し合うと、ひとり一人の人生は様々で、形は違うけれど女性であるがゆえの困難さに出会います。しかし、私だけの問題ではないことやその困難さの社会的背景をグループが気づかせてくれると共に、このグループの力動が人をエンパワーメントさせていきました。こうした場が日常的にあれば、女性たちはもっと生きやすいのかもしれません。
講座修了生が「この2年間の講座で学んだこと、得たことをメッセージとして周囲の人たちに伝えていきたいと思います。人間一人の力は小さいものですが、静かな湖面に落ちた一つの滴から波紋が広がって、大きな輪となるように、私の小さなメッセージから周囲の人たちの意識が少しずつ変わり、ゆっくりでもよいから広がっていくことを願っています。」と述べています。受講生によって、フェミニストカウンセリングの視点で女性たちと関わり、手をつなげていくことができれば、女性たちが生きやすい山口県になるのではないかと期待しています。
(3)家庭裁判所のDVへの取り組み
辻 龍雄
山口家庭裁判所の新任調停委員研修会でDVについてお話する機会を頂きました。こうした機会を頂けることは大変に有難いことです。
シェルターのメンバーは、これまで離婚の調停に同行したりしています。その際に経験した調停委員に知ってほしい要望などを聞き、その内容をお話してきました。
裁判所へ行くことが、どれほど勇気がいることか理解してほしい。男性には社会的地位もあり、信用性も高く、調停の場でも気後れしない。一方、女性は社会的な経験に乏しく、涙するなど感情に流れやすい。女性が何か主張すれば、自分勝手なことばかり言ってわがままに見える。「だから暴力を受けても当然だ」という感情がでてくる。精神的な被害が大きいほど、女性は「変な人」とみなされやすい。
女性の置かれている立場を理解してほしい。調停は3回くらいで終わることが多いようだが、なかなか話せる問題ではない。3回ではようやく話すことができるようになった段階ではないか。どうか、じっくり話を聞いて頂きたい。
さらに、妻に暴力をふるう男は子どもたちも殴っている。虐待されていた子供たちは、父親には会いたくない。調停は通常、父親の子供への面接権を認めるが、被虐待児の方は父親には会いたくない。面接権を認めないことも選択肢の一つ。両親の不仲の中で、人格形成期を育った子どもたちのその後のこともお話しました。
そして、たとえ離婚できても、生活費はおろか、養育費も、慰謝料も、諦めざるをえないのが現状。夫がお金をいれないために、生活費をサラ金に求めざるを得なくなり、その返済に追われることになる現状がある。
中国新聞のDVについて深く踏み込んだ一連の記事も、是非読んで頂きたいと思い、添付資料として使いました。
熱心に聴いて頂いたこと、どうすればDVを減らすことができるのだろうか?など、いくつもの前向きなご質問を頂いたこと。誠に有難く思いました。裁判所が大学教授ではなく、私のような市民を講師として招いて下さったことに感謝致します。
(4)活動日誌 2005.4~2005.6
*月例会を除く
≪活動日誌≫
2005年1月~
1月10日 ニュースレター印刷 発行
1月15-16日フェミニスト・カウンセラー養成講座・定例会
1月18日 自助グループ
2月 4日 岩国市DV研修 講師
2月12日 DV男女共同参画センター研修会
2月15日 県民活動共同推進事業「事業検討会議」
2月19-20日フェミニスト・カウンセラー養成講座
2月21日 自助グループ
2月22日 県DV研修会参加
2月23日 男女共同参画課との協議
2月28日 県ボランティアセンター アンケート調査
2月 4日 入所者受入
3月13日 住田裕子弁護士講演会参加
3月19-20日フェミニスト・カウンセラー養成講座・定例会
3月21日 入居者引越し
3月22日 自助グループ
3月28日 DV被害者支援連絡協議会
3月31日 県と一時保護委託契約
2005年4月~
4月18日 自助グループ
4月24日 定例会
5月14日 定例会
5月20日 自助グループ、理事会
5月24日 県男女共同参画課視察
5月26日 会計監査
5月31日 面接
6月 4日 総会
6月16日 自助グループ
6月20日 弁護士相談付き添い
6月23日 県DV被害者聞き取り調査