ニュースレターNo.11
2007/08/01
No.11
目次
(1)総会報告
(2)デートDV ハワイそして韓国の現状と取り組み
(3)日本セーフティプロモーション学会
(1)総会報告
暑中お見舞い申し上げます。
去る6月10日にNPO法人山口女性サポートネットワークの定期総会を開催しました。ここに、活動報告、ならびに決算報告をいたします。
みなさまからの会費・賛助会費、さらに、国際ソロプチミスト防府の推薦による国際ソロプチミストアメリカ連盟からの助成金、バザー品の提供などで、お蔭様で、一年間シェルターを維持することができました。ご協力いただきました方々に心よりお礼申し上げます。
1.シェルター事業ですが、日本財団の支援で、シェルターのトイレの改修を行うことができました。大変好評で、快適に利用していただいています。平成18年度のシェルター入所者は7家族10人でした。県の委託で入所した方は3家族4人です。
入所された方が自立されるために、あらゆる手を尽くしましたが、結果的には夫の元に帰られたケースがあります。その方ご自身で自立が出来ないと判断されたわけですが、シェルターからすぐに自立ではなく、中間施設としての“ステップハウス”の必要性を投げかけています。まだまだ、課題山積です。
2.相談事業では、電話相談件数は161件と増えています。電話相談はこれまでどおり月・火・水曜日に行い、全国DV共通ホットライン、24時間DVホットラインに参加しています。
3.啓発研修事業ですが、「日本女性会議2006しものせき」で女性と暴力の分科会を担当しました。100人近い参加者とともに、「DVがこどもに与える影響」についてパネルディスカッションをしました。山口県小児保健研究会で民間支援と医療関係者との連携について事例を元に発表しました。新しいリーフレットも作成することが出来ました。
4.自立支援事業では、自助グループ活動を毎月行っています。自助グループで心の整理ができた方もおられ、自助グループというものの意義を実感した一年でした。新に、もう一つ別の地域に自助グループを立ち上げました。パソコン教室は残念ながら参加者が減少しています。
5. 総会で出された意見は、(1)今の状態では経営的に先が見えている。積極的に助成金を得ていってはどうか。(2)メール相談が少ない、携帯電話からのサイトを作っては。(3)会員・賛助会員の中で、医療、育児などの援助が出来る人に、ボランティア登録を呼びかけては。というご意見がありました。これらの意見を、活動に活かしていきたいと思います。
(2)デートDV ハワイそして韓国の現状と取り組み
2007年7月7日
主催:ネットワーク虹 於:エソール広島
1.デートDV ハワイでの現状と対策
講師:マーガレット・マスナガ
(ハワイ州女性向上委員会議長・弁護士)
10代のデート暴力防止の活動をしている。13歳くらいの少年少女がデートし、キスやハグをしたりして楽しく過している。一方が(多くは男の子)セックスをしたいと思うようになる。女の子はノーと言っても、男の子はセックスをすることしか考えられなくなり、少年は無理やり性交渉をする。少女は混乱し、性交渉まではしたくなかった。恥ずかしい、誰にもいえないという現状がある。
ハワイ州ではデートレイプは3人に1人が体験していて、全米の中でも高い比率で、高校生では40%が被害にあっている。被害者は、その後薬物依存、アルコール依存、摂食障害、多くの異性との性交渉などに陥り、再び被害に合う。親の81%は、デート時の暴力が原因だったとは知らない。
全米で衝撃を与えた事件がある。テキサス州で、ある女の子(スペンス)は、デート暴力に遭っていた。服装や髪形を細かくチェックされ、ある時は撲られ、精神的な虐待も受けていた。相手の男の子はスポーツマンで、人気者だったので、彼女は被害のことを誰にも言えなかった。その少女は転校することで被害を免れたが、その男の子の次の恋人になった女の子は、彼の暴力によって学校で殺害された。
この事件で衝撃を受けたハワイ州では、検事、弁護士、教師たちがデート暴力への対応について話しあった。2004年全米女性の地位委員会は、政府の支援を得て、デート暴力防止用のツールキットを作り、生徒・教師・カウンセラー・医師・裁判官・弁護士に配布している。それには、CD、DVD、対応策が書かれたカードなどが入っている。さらに、少年少女の性意識・教育として、ティーンエイジャーが好むテレビ番組で、デートDVの知識を放映し、啓蒙している。
【被害にあいそうになったら―テレビ放映内容より】
1. 暴力を加える人と2人にならない。
2. デート後の帰りは、2人にならないように帰る方法を考える。
3. デート中に酒や薬を飲まない。
4. デートから安全に帰るためのタクシー代等の余分なお金を持って出かける。
5. 誰からの電話かを家族が確認した後で当人が電話にでる。
6. 誰かに後をつけられていると感じたら、道を変える。出かける時間を変える。
7. 暴力を加える人には、電話で意志を伝え、直接会わない。
8. 親など信頼できる人に、今起きていることを話す。
9. 危害をあたえられていることを、大人に伝える。
【ツールキットの内容は】
1. 少年少女に、デート時の良い事例を教える。(片方がノーと言えば、セックスを強要してはいけない。セックスの強要は強姦である。デートDVとはなにか、健全な付き合い方はなにか。)
2. 親は子どもがどんな子と付き合っているかを知ること。
3. 困った時の助けは常にそばにいる。周りの大人は子どもたちの話すことをよく聞いて欲しい。暴力的な少年から離れるために、学校を変わることも必要である、などである。
【デート暴力がどのように起こるか】
1. 精神的、肉体的に学習された行動である。虐待された経験は同じことを繰り返す。
2.アルコールや薬は直接の原因ではないが、状況を悪化させる。
3. デート暴力は、力で人を支配するものである。
4. デート暴力への改善は教育である。虐待する人に責任を課すべきで、決して許されないことを示す必要がある。
5. デート暴力は密室で行われる。
6. デート暴力は、知り合いによって引き起こされる。対応の第一歩は、起こらないように防止することである。一方、転校してデート暴力から助かった彼女(スペンス)は、「殺された彼女は自分のことであり、自分もあのまま彼と付き合っていたら殺されたかもしれない。早く助けを求めることが大事だ」と暴力の体験を語ることで、デート被害者の自覚を促す運動をしている。当事者自身がなかなか暴力を受けていると自覚しにくい点において、当事者の体験談は効果的である。
2.韓国の若者たちのDV被害と支援状況
講師:パク・インへ(「韓国女性の電話」理事)
韓国でも恋人間でおこるデート暴力(韓国でも「デート・DV」とは言わない)はあるので、その実態から報告する。
デート暴力とは、身体的暴力を加えたり、暴言を吐いたり、モノなどを壊すことで、男性は女性を脅している。女性の方は恥ずかしいと思い、助けを求めることが出来ない。もし警察に助けを求めたとしても、恋人同士には何の処罰もない。加害者は暴力をふるい、彼女に謝罪するという繰り返しをする。
1. 暴言-太っていることを責める、酒からさめると謝罪する。謝るので別れることができない。
2. 強圧的性交渉を求める―性交渉はしないという約束で一泊二日の旅行に出かけた。夜になると性交渉を要求され、断っても強引に性的暴行を受けた。男性は「君を愛しているから・・」という。
3. 結婚をちらつかせる―先輩の家に遊びに行って、性関係を求められた。拒否したが、強引に性的暴行を受けた。彼は「君だからしたことだから許してくれ」と結婚の約束をした。その2ヵ月後、彼は別れると言う。彼女は関係が悪化することを恐れて、彼の要求(性交渉)を受け入れる。このような強引な性交渉は犯罪である。(性犯罪に対する法律がある)
4. 脅迫―インターネットで知り合う。男性は仕事に行かない。別れると言うと追いかけてくる。さらに、脅迫メール(裸の写真など)を送ってくる。彼女の裸の写真を玄関に置かれた。
5. 肉体的暴力 (講師省略)デート暴力は家庭内暴力に繋がる。デート暴力と家庭内暴力とは深いつながりがある。DV被害者の多くは、結婚前から暴行を受けている。結婚前から暴行を行っている人は、結婚後も暴行を行う例が多い。デート暴力の被害者は結婚後と同じように精神的、性的、身体的暴力を受けている。
【予防するには】
★女性の立場から
1. 女性は自分を主張する態度を養う。イエス、ノーをあいまいにしない。
2. 自分の価値をはっきり伝える。-暴行があった時、二度とこのようなことがあってはならないことを伝えておく。性暴力や暴力を耳にした時、立場を明確にしておく。親密な関係になりたくない時は、彼の家に行ったり、自宅に招いたりしない。性関係の意志がないのに、ホテルに行くのもいけない。デート中、男性がお金を払うのが韓国の風習であるが、男は金を払ったのだから性関係を持ってもいいと思ってしまうので、デート費用はワリカンがよい。
★男性へ
1. 相手が嫌うことを押し付けることは男らしいと思うのは間違いである。性関係を嫌だと言われた時は素直に受け入れよう。一度同意したと言っても、毎回同じとは限らない。
2. 性関係を拒否されたからといって、人格を拒否されたと思うことはない。
3. 酒に酔っている時は、性関係を避ける。
4. 性関係の回数や体験を自慢しない。
韓国では次のような男性には気をつけなさいと伝えている。(1)嫉妬心が強い。(2)過ちを人のせいにする。(3)カッとなりやすい。(4)子どもの頃虐待された人(私しか彼を助けられないと思い込んでしまう可能性があるため?)。 (5)ストレスで酒を飲む。 (6)物を投げつける。 (7)酒で乱暴をはたらく。 (8)ほほをなぐる。 (9)悪口や、暴言を吐く人。 (10)盗癖のある人。 (11)一日に何度も電話してくる人。 (12)相手の服装や髪型にうるさい人。(11)横柄な態度の人(自分が好きだから、相手も好きだと思い込む人)。
このような人と結婚すると、家庭内暴力につながる可能性がある。結婚していないなら別れることも賢明な選択である。ハワイ、韓国、日本での話し合いで分かったことは、最も困難なことは、いかに被害者が被害にあっているかという自覚を促すかであった。被害にあっていても、学校を退学してまで,その子と付き合ってしまうという話も出た。(以上は、講演での記録をもとに当法人で編集したものである)
昨年、私たちの相談にも、以下のような事例がある。少年から暴行などの被害に遭いながらも少女は少年に会いに行く。少女は「彼はかわいそうな人。私以外に彼を助けることはできない」という状態で、彼に会いに行くことをやめさせることができない、という内容で保護者から相談があった。当人自身が彼から離れたい、彼から被害にあっていると思わないので、私たちもどうすることも出来なかったというケースである。今後の対応策について、意識啓発、教育などが求められる。
(3)日本セーフティプロモーション学会
辻 龍雄
セーフティプロモーション(以下SPと略)とは、事故、暴力による外傷やそれに対する脅威を、部門や職種を越えた協働で予防しようとする取り組みです。この暴力の中には、DVも含まれています。
日本セーフティプロモーション学会は、今年の9月24日に京都で設立総会を開催します。学会のホームページは、
http://www.safetyprom.com/です。このSPの活動をスエーデンから日本に紹介し、学会設立に尽力されている反町吉秀医師(青森県上十三保健所長)に、7月14・15日にお会いしてきました。
お会いするために青森に行った直接のきっかけは、公衆衛生という雑誌の巻頭言に掲載されている反町医師の「安全・安心なまちづくりのために公衆衛生関係者ができること セーフティプロモーションのすすめ」という一文を読んだことです。
その文章の中に、“虐待やDVなどの問題に対し、これまでの取り組みで十分とは、実感できない方もいらっしゃるのではないだろうか?”。さらに、“現状の取り組みが、事後対応的または危機管理的な視点が強く、発生予防的な視点が十分でない憾みがあるのに対し、SPは安全・安心の積極的な創造を志向していることである”。まさに、私の中にある疑問の核心を突いていたのです。
山口女性サポートネットワークは、個々の事例の支援に取り組んでいます。しかし、次から次に悲惨な事例が現れてきます。当事者にDVに対応するための知識がないのは明らかです。教育ということが必要になってくるのですが、県民講座、市民講座のDVの講演に来られる方は、支援することに既に関わっているか、興味を持っていて、さらに勉強しようという人たちが多いのが実情ではないでしょうか。
セーフティプロモーション、セーフコミュニティは、WHO主導で行われている国際的な活動です。2007年現在、世界中で110のコミュニティが、セーフコミュニティとしてWHOの認証を受けていますが、日本で認証された市町村はありません。
京都府のホームページをホームから「防災・防犯安心・安全」→「セーフコミュニティ」と開いていきますと、セーフコミュニティ活動に、京都府がすでに取り組んでいることがわかります。京都府、亀岡市、横浜市、青森県十和田市が、WHOの認証を目指しているようです。
反町医師が書かれたSPに関する論文を多数持ち帰りました。これらの論文のコピーをご希望の方は送付いたします。また、SPの展開について興味のある方、ご協力頂ける方は、お気軽にご連絡頂ければ幸いです。
(連絡先 tatsuo-tsuji@mx81.tiki.ne.jp)
日本セーフティプロモーション学会には、医療職限定などの参加資格規定はありません。学生の参加も可能です。是非、ホームページを参考にされ、安全・安心なまちづくりという学会の趣旨に賛同されましたら、9月24日(月曜祝日)、京都での学会に参加申し込みをお願い致します。