ニュースレターNo.13
2008/07/07
目次
(1)総会を終えて
(2)一年ぶりにFさんに会った
(3)セーフ・コミュニティ国際会議 in 亀岡京都
(1)総会を終えて
盛夏の候、みなさま如何お過ごしでしょうか。
平成19年度の事業が終わり、5月25日に平成20年度総会を開催しました。
19年度の事業について報告します。電話相談は延べ130件、全国共通DVホットラインが60件、さらに今年度はメールでの相談も43回と増えています。一旦区切りのついた事例も、継続して相談に応じるケースも少なくありません。
シェルター事業につては、利用日数、委託日数ともに増えており、一時保護の委託が3家族6人64日、委託外が2家族4人4日、保護以外の利用も17人5日の利用となっています。
入所者の付き添い支援は、警察2回、病院3回、裁判所2回、行政関係5回です。また、懸案であった浴室の改修を日本財団の助成で行うことができました。
エスコート事業は、裁判所付き添いを2回、弁護士付き添いを3回、病院付き添いを4回行いました。
ドコモモバイルファンドから「あなたはひとりぼっちではない」というテーマで、当事者と子どもへの助成を受けました。これは、シェルターを出られた後の当事者と子どもの生活支援や相談を行っています。
広報啓発事業では、ニュースレターの発行、イベント(山口市、周南市、防府市)に参加して啓発活動を行いました。また、セーフ・コミュニティ学会の国際会議において、実践発表を行うことができました。その内容は、辻龍雄コーナーで報告しています。また、県内各地の人権講座などの講師要請を7回受け、DV被害者への理解を深めるために講演をしてきました。
さらに山口県配偶者暴力予防啓発協働事業に応募し、委託を受けました。ここでは、「デートDV防止」の講演会を開催しました。講師にアウェア代表の山口のり子氏を迎え、県庁で行いました。教育関係者など多くの参加がありました。教育界で今後の検討の参考になることを願っています。
研修事業は、幕張市で開催された全国シェルターネットシンポジウムに5人参加し、デートDV ファシリテーター養成講座には3人が参加しました。やまぐち女性財団の助成を受けて、サポーター養成講座を12回連続で主催しました。新たなサポーターが誕生しています。
自立支援事業としては、自助グループの活動は参加者の都合で年度途中からできませんでした。要望はあるので、今年度、開催に向けて検討しているところです。職業支援としてのパソコン講座は延べ32回行っています。
少しずつですが、当事者支援の充実に向けて、歩んでいるところです。
(2)一年半ぶりに Fさんに会った。
Fさんは、私たちが支援した当時は、夫とは別居できたものの、うつ傾向がひどく動けない、決断できない日々だった。子どものSちゃんは4歳半で母親から離れられず、母親へ命令し、それが聞き入れないと大泣きをするという状態だった。現在は、母子で、関東で暮らしている。
私は彼女が県外に逃れてからも細々と、携帯のメールでやり取りをしてきた。彼女の住んでいる街にいく機会ができて、連絡を取った。
約束の場所にFさんは娘のSちゃんと一緒に来てくれた。一年半前なら、決して母親から離れようとはしなかったが、Sちゃんは、噴水の周りを元気に動き回っていた。
もうすぐ6歳になるSちゃんは背も伸びて幼児の面影は消えつつある。一緒に夕飯を食べることになりSちゃんに希望を聞くと、「エビの寿司が食べたい」とのことで、近くの店に入った。かつては、箸を持つこともままならず、手づかみで食べていたが、上手く箸を使うことができるようになっていた。このようなSちゃんの劇的な成長に驚いた。Fさんによると、保育園入園当時は、お昼寝も絶対にしようとはしなかったそうだが、最近ではよく眠るようになったそうだ。
Fさん自身はというと、当初はこの街の支援者の下で半日働いていた。最近では、収入を増やすために自分で仕事を探して働き出したそうだ。山口県に帰りたい気持ちはまだあるらしいが、「絶対に、元夫の住んでいる街には行きたくない。未だに、当時が思い出され、身体が凍る」と言っている。
私にできることは、細々とメールで応援メッセージを送ることくらいである。FさんとSちゃんの二人の現状に安心した。(Y)
(3)セーフ・コミュニティ国際会議 in 亀岡京都
辻 龍雄
平成20年3月1日に京都府亀岡市で開催されたセーフ・コミュニティ国際会議で、“A Safe Community Requires Multi-Agency Collaboration for the Effective Support of Victims of Domestic Violence”と題して口演発表してきました。
私の前はモンゴルからの発表で「モンゴル女性と少女の人身売買と性的搾取」。多くの若い、否、幼い女性たちが中国や中央アジアに売春目的のために売られているようです。私の次はバングラデシュからの発表で「バングラデシュの地方における女性に対する暴力の深刻さと危険要因の評価」。2004年5月号の月刊誌Days Japanに、角田由紀子弁護士がバングラデシュでの戦慄するような女性への暴力について記載されており、その記事のことを思い出しました。
山口女性サポートネットワークは2002年に設立されました。当初の年間相談者数は34名しかなく、啓蒙のためにポスターの作成配布などをしました。その後、相談件数は徐々に増えていき、2007年には年間122名となりました。過去6年間に緊急一時保護した女性は20名。16名は山口県内、4名は県外の居住者です。その内訳は身体的暴力被害者18名、心理的暴力1名、被害妄想1名でした。身体的暴力の被害者の中には、ご主人が亡くなられた後、息子や娘からの暴力で避難された方が2名おられます。シェルターの滞在期間は平均13.3日(2~35日)、被害女性の年齢をみると平均41.4歳(20~65歳)で、10代での結婚妊娠が3名いました。10代での結婚は問題が多いように思います。加害男性の平均年齢は43.1歳で女性よりも2.3歳高い結果でした。
当シェルターを出た後、別居された方は13例(65%)、自宅に戻られた方4名(20%)、不明3名でした。自宅に帰られた4名の方の背景には経済的な問題があります。不明は20歳代の女性です。20名中の7名の家庭については、明らかに経済的な問題、つまり夫の収入が不十分で、女性も経済的自立が困難という状況がありました。被害者の精神面をみると、20名中10名が精神科を受診、精神科入院1名、自殺未遂2例で、その他の方々も不安やうつ状態を抱えており全例に精神的な被害がありました。このような精神的なダメージを受けた女性が司法や行政に相談にいき、自分の被害状況を説明することや、そこで求められる各種の申請書類の作成などは、とても難しいことなのです。
事故や事件のない安全で安心な街作り(セーフ・コミュニティ)のためには、医療機関や行政機関、司法機関がDV被害者の支援のために連携できるような体制作りが不可欠だと思います。そのような趣旨で発表してきました。日本のDV被害者がおかれた状況を理解する一助になればと思います。
緊急一次保護したDV被害者の13名は行政へ、12名は警察・裁判所・弁護士へ、13例は医療機関に同行しました。私たちは常にDV被害者に付き添います。