ニュースレター20号
2012/01/17
寒中お見舞い申し上げます。
いかがお過ごしでしょうか。昨年は東日本大震災があり、原子力発電所の津波被害にも、皆様は様々な被災地支援を行われたことでしょう。私たちも被災地支援としてのホットラインを担当したり、現地での相談電話に入ったりしています。
今年度の日常的な活動についてお知らせします。
相談事業では、日常的に相談業務をしていますが、その他として、昨年2月~3月に性被害者やDV被害者のための内閣府主催のパープルダイヤルの一部を担当しました。それに引き続いて、4月からNPO法人全国女性シェルターネットは民間団体の助成金を得て、24時間無料ホットラインを開設しています。全国のDV被害者支援団体がホットラインを受けています。山口女性サポートネットワークもそれに加わっています。頻繁にかかってきます。
自立支援事業では、パソコン教室を開設しています。また、今年度も山口県配偶者等暴力被害者自助グループ委託を受けています。仲間と話し合うことは様々な変化を起こします。これまで、相談員にしか語れなかった身の上話を自助グループで話すことで自信がついた人もいます。また、夏に古民家で合宿しました。合宿は大変好評でしたので、2月に再度合宿をする予定でいます。
グループで話せない人には、個人的にケアをする時間を取っています。定期的に個人ケアを希望されるケースもありますので、かなりの需要があることがわかります。電話だけでは話がややこしくなる場合には会って話をするようにしています。顔が見えるので、信頼関係もできて効果的だということがわかりました。急激な変化は期待できませんが、1回に2時間程度話し込んでいくうちに少しずつ元気になって問題解決に向かわれるようです。一人ずつの面接から自助グループへの移行をも可能になった人もいます。
啓発事業ですが、山口県男女共同参画協同事業に応募し、受託となりました。この事業では、介護事業者に向けての「DV被害者を理解するセミナー」を計画しました。DV被害者のことがよくわかったと好評でした。また、各種団体が実施している研修会の講師として派遣されました。今年度の特徴としては、若者に向けた「デートDV防止教育」を行っています。これまでに山口県や宇部市からの依頼で、高等学校、専門学校、大学で実施してきました。DV防止としては、若者への教育が最も効果的だといわれています。3月までに何校かでの実施予定です。
研修事業では、毎年行われている全国シェルターシンポジウムに参加しました。また、内閣府主催のデートDV防止教育研修会、全国女性シェルターネット主催の「DV被害者支援の研修」、NPO法人レジリエンス主催の「ファシリテーター養成のための心のケア講座」に参加しています。研修会に参加することで、被害者支援やDV防止教育に活用しています。
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山口県男女共同参画事業
介護事業者のためのDV被害者を
理解するセミナー
山口県男女共同参画協働事業「DV被害者を理解するセミナー」を山口県とともに実施しました。
平成23年12月10日10:00~16:30 山口セミナーパーク
講師:石本宗子氏(久留米市男女平等推進センター相談コーディネーター)
10:00~10:30 「地域の見守りネットワークづくりに向けて」山口県
DVの定義、国及び県の施策について山口県男女共同参画課より説明
10:30~12:00 基礎講座「DVについて知っていますか」
DV問題と子どもへの影響&支援の組み立てと連携について
・ドメスティック・バイオレンスの発見の歴史と定義について
・暴力の現状と暴力の実態について
・加害者、被害者の状況と子どもに与える影響について
・女性に対する暴力の背景とDV被害者支援策について
チェックシートを通して社会通念としての暴力容認社会を知る
13:00~15:00 応用講座「DV被害者を職場に受け入れた時の対応」
・DV被害者への支援のあり方
DV被害者への関わり方
安全確保と守秘義務の徹底、自己決定の尊重、
二次被害を起こさない、エンパワメントをめざす、
孤立させない
支援の組み立てと連携・・・久留米市のシステム図より
・DV被害女性が貧困に追い込まれる構造と支援のあり方
エンパワメントをめざす、孤立させない
15:10~16:30ワーク 「接し方のワーク」
・聞くワーク:相談員が全く反応しない場合にどう感じるかを体験
・事例を基にロールプレイ 二次加害編
相談員B,相談員Cのいずれも望ましくない対応を受け、
相談者はどう感じるかを体験
講師は、DV被害について20数年歩まれた経験を基に話をされた。内容はレベルの高いものであったが、分かりやすい内容であったので、参加者は概ね理解できたのではないかと思われる。ただ、ワークが初めての人にとっては、ワークの狙いがわからず、混乱気味の人もいた。
広報では、ちらしを下松市、周南市、防府市、山口市、宇部市、山陽小野田市、美祢市の介護事業所413か所、ケアマネージャーの会合に230枚、山口女性サポートネットワークの近隣の会員113人に配布した。また、実際に介護施設(防府市、山口市、宇部市)40か所を訪問し、行政関係も訪問した。しかし、ケアマネージャーの研修や介護保険事務関係の説明会、高齢福祉関係学会などと重なって、管理者の出席はなかった。結果的には、個人的つながりで30人近くを誘うこととなった。広報で事業所を歩いて話をすることで、導入段階での啓発にはつながった。
実際には管理職の参加はなかったが、介護事業従事者にとって、DV被害者への対応の仕方については、介護現場でも、職場の仲間としての対応もできることにおいては、当初の目的を達することができた。また、民生児童委員や調停員、看護、教職などDV被害当事者と接する機会の多い人の参加があったので、DV被害者を理解するという目的は達成した。
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全国シェルターシンポジウム 報告
全国シェルターシンポジウムは、全国女性シェルターネットと民間シェルターとの共同主催で毎年1000人から2000人の参加者によって各地持ち回りで行なわれています。民間シェルター、被害当事者、研究者、法律家、議員、行政職員などの参加があります。ここでは、海外のDV被害者支援や、注目すべき事業展開、DV防止法の改正にむけての取り組みが実践報告されています。国や地方自治体での取り組みの最新情報もえられます。
今年度の予定であった仙台では東北大地震によって、開催が危ぶまれましたが、仙台の民間団体の踏ん張りで開催に漕ぎつけることができました。基調講演の内容を紹介します。
■平成23年11月19日12:30~ 20日16:15
基調講演「DV・性暴力被害女性への支援~性暴力救援センター・大阪(SACHICO)開設1年の経験も踏まえて~」
暴力救援センター・大阪代表加藤治子(阪南中央病院産婦人科医師)
性暴力救援センター・大阪(通称SACHICO)を2010年に開設した。24時間体制のホットラインと支援員の常駐による心のケア、女性産婦人科医による診療を提供している。SACHICOは、警察への通報、弁護士相談、カウンセリング、精神科とも連携し、ワンストップセンターとなっている。開設して1年で電話は1463件、来所件数は387件。来所者のうち診療は128人、レイプ強制ワイセツ被害78人(警察への通報37人69.2%)、性虐待被害36人、DV被害6人、その他8人だった。全国に暴力救援センターをつくる必要がある。人件費がかさむので、公的助成が必要である。
賛助会員のみなさまへ
私どもの活動に、いつもご理解と温かいご支援を賜り、真にありがとうございました。
被害女性のためのシェルター活動や研修講座、被害者女性の自立へ向けての様々な事業を試行しております。しかし、私たちNPO活動の基本は、ご理解いただく皆さん方の意思と篤志に支えられております。どうか、本年も、多くの皆さんのご賛助・ご支援を賜りますようお願い致します。
会員:年会費5千円、賛助会員(個人 年会費1口3千円、 団体 年会費1口1万円)
郵便振替口座:01370-2-68031 口座名:山口女性サポートネットワーク
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設立から、ちょうど10年
辻 龍雄 tatsuo-tsuji@mx81.tiki.ne.jp
医学の分野では、症例報告というものがあって、稀な疾患や治療に苦慮した症例などを、日本語や共通言語の英語で論文として報告している。誰もが自験例の治療に、各地の、各国の治療経験を参考にすることができる。こういう背景も一因となって、医療機関での治療法は均一化されている。
単行本と比較して、論文のいい点は、編集委員会の査読と指導によって、その内容の科学性が検証されていること。今や、インターネットが普及して、誰でも検索でき入手できること。余談だが、面白いことに、日本の雑誌でも、米国や英国の雑誌でも、論文の書き方は驚くほど似ている。
日本のDV論文の多くは、大学人による論文が多い。内閣府や各地の行政は多くの調査報告書を作成しているが、事例の検証に基づく報告書は、個人情報保護を強調するために出にくいだろう。
日本全国には100施設近くもの民間シェルターが活動している。民間シェルターは行政よりも早い時期から活動を開始していて、膨大な量の「治療経験」がある。人事異動がないために長い期間にわたり当事者たちと関わり、10年後、20年後の「予後」をみている。こうした比較からみても、民間シェルターには多くの知見がある。
全国シェルターシンポジウムやNPO法人全国シェルターネットがあって、関係者が全国レベルで連携し、情報交換、人的交流があるのだが、部外者には、まったくといっていいほど、その実際の活動がみえてこない。この点は、犯罪被害者支援活動とよく似ている。守秘性が高いために閉鎖的なのだろうが、多くの人の理解や協力を得ていく上で、これでいいのかなと多少疑問に思う。
国際Safe Community会議にはViolence(暴力)の分科会があり、DVも論議されていた。こういう国際会議に毎年参加して、他の国で、どのような取り組みがなされているのか知ることも必要だろう。
山口女性サポートネットワークが設立され、活動を開始したのは2002年1月。ちょうど10年が経過した今、活動の方向性について思うところである。
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パープル・ホットライン 0120-941-826
24時間ホットラインです。災害や性暴力など、思わぬ困難や被害に直面したとき、いつでも、
どこからでも、無料でかけられるフリーダイヤルです