ニュースレター24号
2014/01/28
寒中お見舞い申し上げます。
いつも皆様の温かいご支援をいただいておりますことを厚く御礼申し上げます。
事業の近況についてお知らせします。
相談事業では相談件数が少し落ち着いてきました。逆に、一時保護事業ではシェルターへの入所件数が多く、入所者数も入所日数も多くなっています。入所者が自立するために多くの時間を費やしています。啓発事業では、DVの講演やデートDV防止講座の講師もしているところです。
10月に講演会「思春期外来から見たデートDV」を講師に上村茂仁氏(レディースクリニック院長)を迎えて行いました。講師の上村先生は若者からの性に関する相談をメールで受けておられます。デートDVに遭っていても「別れさせる」ことに主眼を置くのではなく、当事者が持つさまざまな問題に気付かせるよう粘り強い支援をしていくことの大切さを説かれました。
おなじく10月に「平成25年度県民パワーアップ賞」を知事から受けました。たくさんの応募から5団体が選ばれて表彰されました。推薦し応援して下さいました方々に感謝申し上げます。これまでの12年間、みんなで力を合わせ継続できたことへの賞でしょう。長い道のりでしたが、気がつけばもう12年です。夢中で試行錯誤した日々でした。今も、新たな気づきの毎日です。
12月、講座「デートDV対応ノウハウ」をサポートネットワークのメンバーが講師になって行いました。メンバーが12年間培ってきた力を発揮しました。
これまで培った12年の実績の下に「第17回全国シェルターシンポジウム2014 inうべ・山口」を11月1,2日に宇部市で開催する運びとなりました。
シェルターシンポジウムは、1998年札幌大会から始まりました。全国の民間シェルターの支援者や当事者が集まって「広がれ、シェルタームーブメント」と題してシンポジウムが行われました。以後、その時々の課題をテーマに取り上げ、DV被害者支援についてのノウハウや情報交換、海外のDV事情や法律の運用、都道府県のDV防止政策と協働などについて話し合ってきました。
この全国シェルターシンポジウムが開催されてきたことの大きな成果はDV防止法制定に向けての動きをつくり法の制定に漕ぎつけたこと、さらに三度の改正に深く関わってきたことです。近年では民間シェルターの支援者や被害者だけでなく、行政職員・相談員もたくさん参加するようになりました。こうしてDVを取り巻く様々な課題を検討しています。この2,3年は性暴力禁止法制定に向けての流れをつくっていくことが大きな課題です。また、毎年全国各地で行われることで、それぞれの都道府県や市のDV防止政策へ大きな影響を与えてきました。これまでは先進的な都道府県、それも大都市で開催されてきましたが、地方小都市でも開催できるようにということで、宇部市に白羽の矢がたちました。
宇部市でのシンポジウムの日程ですが、第一日目は宇部渡辺翁記念会館で基調講演及びシンポジウム、第二日目は宇部興産ビルで14分科会の予定です。詳しいことが決まりましたら、お知らせします。
皆様の力強いご支援とご協力を頂いて、実りあるシンポジウムを実現したいと願っております。
~山口県にもこんな支援があったらいいな~
性暴力救援センターSARC東京
電話03-5607-0799
「性暴力禁止法を作ろう!~韓国からの経験に学ぶ~」(2014年1月12日(日)13:30~16:30 東京ウィメンズプラザ)に参加してきました。ここで、平川和子さんからSARC東京の活動の紹介が有りました。大変興味深い内容でしたので、皆様にご紹介します。平川和子さんのお話はレジュメがなく、聞き取ったものですので、多少の記録違いがあるかと思います。その時はお許しください。
性暴力とは、性犯罪に限定したものではなく、セクシュアルハラスメントをも含む性に対する嫌がらせと考えています。これは、女性のみが被害者では有りません。男性、特に男児に対する性的な嫌がらせも含まれます。
SARC東京は2012年に開所した性暴力にあった女性のための急性期の相談機関です。
支援員が24時間体制で電話相談を受けています。電話相談だけではなく害直後の面接相談と産婦人科的医療の提供、希望があればSARCから警察への通報もできます。必要に応じて、弁
護士による法的支援や精神科医を紹介しています。さらに生活再建のための手伝いをするなど総合的な支援を行っています。主にレイプ、強制わいせつ、虐待への支援を行っています。
最初の一年間約2700件と、次年度の半年間2300件と対応件数がほぼ一致しているくらい増加しています。これまで泣き寝入りしていた被害者が、何らかの支援を求められるようになったということです。
しかし、支援機関のなかでも性暴力被害者について理解がされていないことも事実です。産婦人科での緊急避妊ピルは23人中3人がもらえたが、ピルをもらっただけでケアや次の支援につなぐという支援がなされていません。さらに、警察では12人中8人が追い払われています。その時、「あなただって悪い」、「夜遅くまでいたから被害にあう」などという無理解な対応がなされています。まだまだ性被害者に対する対応が不十分です。しかし、同行していくうちに、警察の対応のしかたが徐々に変わってきています。同行支援は被害者を守り、次の支援につなぐという点からも非常に有意義です。相談員として参加して、全国各地にこのような性暴力救援センターができることを切に願っています。
シェルターからの報告
4月から12月まで山口女性サポートネットワークで一時保護した件数は、7家族16人、200日となっています。これまでにない保護件数であり、シェルターの利用日数も最大です。年齢も0歳から60代と一人一人の事情は違い、これまで生きてきた経歴も多種多様です。
シェルターでは、生活の様子を見ながらそれぞれの人に合ったサポートをしていきます。面接相談だけでは分からない部分が見えてきます。どのようなものを食べているか、一日の過ごし方はどうか、子どもの接し方はどうかなどの生活の様子を見せてもらいながら、支援の方向を探っていきます。彼女たちに今、必要なことは何なのか、言葉や態度に表れてこない心の痛みや不満ややり場のない怒りを少しでも癒せるようしっかり気持ちを受け止めるようにしています、子どもたちには就学・保育手続き、当事者には自立に向けての手続きや支援をしていきます。今回は入所期間が半年にも伸びたケースもあります。シェルターを出ても見守りが必要なケースもあります。
一人の人が生活再建するって、息の長い支援が必要なんですね。
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日本セーフティプロモーション学会 in 宇部
辻 龍雄
11月1-2日に第17回全国シェルターシンポジウム(大会長 加登田恵子)、11月29-30日に日本セーフティプロモーション学会・第8回学術大会(大会長 辻龍雄)を医学部霜仁会館で開催します。両大会は全国大会です。全国各地から参集される方々のために、私どもは、誠心誠意の準備を進めてまいります。
「セーフティプロモーション(Safety Promotion)」とは、災害、事故、事件などの結果である「傷害」を地域ぐるみで「予防」するシステムを構築していく活動です。その対象には、虐待(弱者への暴力)・暴力・自殺(自分への暴力)も含まれています。
活動の要点としては、
(1)事故や事件を予見・予防可能なものととらえ
(2)健康政策上の課題と位置づけ
(3)科学的方法論で
(4)地域の中での協働体制で予防していく
2日間の開催ですが、初日は公開講座として学会員以外の方のご参加も受け入れようと企画を進めています。学会の入会資格は、大学関係者などの学術関係者だけでなく、市・県の行政職、警察関係者、NPOなどの民間団体の方々も入会することができますので、この機会に是非ご入会頂ければと思います。詳細は、日本セーフティプロモーション学会のホームページをご覧ください。
北欧から始まった活動であるためでしょうか、日本語のセーフティプロモーションに関する書籍は少ないのですが、というより、学術誌の論文以外では、ない?のでは・・・と危惧していました。しかし、昨年11月に、本学会の稲坂恵理事が「なぜ起こる乳幼児の致命的な事故」(稲坂恵著 学建書院)を出版されました。愛らしい挿絵が多数用いられており、乳幼児の事故についての本でありながら、読む人を柔らかい気持ちにさせてくれます。セーフティプロモーションの理念がよくわかる本ですから、是非ご一読頂きたいと思います。
現在、多くの自治体が、WHOのセーフコミュニティ(Safe Community)の認証を取得することを目指して活動しています。また、セーフスクール(Safe School)の活動も大阪教育大学の学校危機メンタルサポートセンターが中心となって進められています。こうした大きなうねりとなっている組織的な動きがあるのですが、私は、セーフティプロモーションの「事故や事件を予見・予防可能なものととらえ」、「科学的方法論で」に注目して、民間団体の活動をみつめなおすことができないだろうか、そんなことを考えています。11月の学会に是非、お越しください。