ニュースレター28号
2016/01/17
寒中お見舞い申し上げます
いつも皆様の温かいご支援をいただいておりますことを厚く御礼申し上げます。
事業の近況についてお知らせします。
今年度になってシェルターへの入所者は少なく、シェルターの利用日数は大体150日ぐらいです。シェルターを利用しないで別居に向かう人も増えています。そうなると、別居に向かうまでの相談が何度もあります。当然、電話だけで済むわけではなく、何度も面接をし、不動産屋、保証人の確保にも力を貸します。エネルギーはシェルターに入所してもらう場合と同じくらい必要となります。ただ、この場合家族などの強力な支援者がいる場合には、その後の回復が早く、子どものサポートなどもしてもらい、様々な相談に乗ってもらえるので生活再建は軌道にのりやすいです。半面、家族が遠くにいるなどで家族からの支援がない場合は孤軍奮闘となります。
それに加えて、シェルター退所後の人の相談が非常に増えています。精神的に不安定になった、子どものことで困っている、生活費に困っている、離婚調停や裁判などで困っている、新住所での不安などです。電話だけでは済まないことが多く、面接をしたり、同行したりして当事者が落ち着ける状態になるまで付きあっています。場合によっては、相談者と相談員との信頼関係を作るのが厳しい人もおられますが、時間と丁寧な対応で少しずつ信頼関係を築くようにしています。何年か時間がたてば、様々なことが解決し落ち着いた生活を営まれていくようになります。
入所時に所持金がなくシェルター代が払えない人も、退所後に生活が安定するとシェルター代を少しずつ分割で支払ってもらっています。ほとんどの方が、厳しい生活の中からシェルター代を払って下さっています。シェルター代が不要になると退所後の生活がどんなに楽になるだろうと思いますが、今の段階ではシェルターに十分な助成制度もないため有料とせざるを得ないことが残念です。
このように相談からシェルター入所、退所後の支援を通してみて、生活保護などの制度を利用していますが、一人家庭の場合年収100~200万円の生活です。母子家庭では、特に公務員や専門職として安定した収入が得られない場合には生活の厳しさに直面せざるを得ません。
全国に散らばる離婚後の家庭を出張の時に訪ねてみました。父親から怒鳴られて育ったこどもが、父親から離れても学校で大声を出す教師のもとでフラッシュバックが起き、登校できないということもありました。唯一の助けは、理解のあるカウンセラーに出会え、月に2回ぐらい母子でカウンセリングを受けているということでした。また、ある家庭では、父親と同じような感情をそのまま受け継ぎ、年下の兄弟に暴力をふるってしまう子どもがいたのですが、周りの協力でなんとか暴力を振るわないように努力をしている姿もありました。このようにDV家庭で育った子どもは、子ども自身が随分苦しんでいました。子どもへのケアが暴力の連鎖をくい止める最大の方策だと思いますし、子どもへの支援の必要性を痛感しています。
デートDV対策のために弁護士ができること
弁護士 鈴木朋絵
結婚していないカップルの間でDV被害が起きて、別の弁護士の相談を受けたけれども対応してもらえなかった、と相談がまわってくることがときどきあります。
相談を受けた弁護士からすると、夫婦間DVであれば「離婚事件として依頼を受ける」ことがイメージできるようですが、デートDVでは離婚慰謝料よりも慰謝料額が低くなるため、「弁護士にできることはあまりない」と考えてしまう方がおられるようです。「弁護士を依頼しても費用対効果が悪いですよ」などと被害者に回答して、相談のみで終わってしまっていたケースもありました。
被害回復に必要なことは、手続を行うことによって、いったん落ち込んでしまった自尊心の回復、そして、被害によって学業や職業を失わないことです。被害内容からして慰謝料金額が低くなる場合であっても、弁護士をたてて請求をすることで、加害者に筋を通さなければならない場合もあります。なによりデートDV被害対策は慰謝料請求だけではありません。警察への被害届提出や保護命令(同居していた場合)又は接近禁止仮処分、同じ学校や職場に通うカップルであれば学校又は職場における配慮要請、医師や臨床心理士・NPOとの連携など、様々考えられ、ソーシャルワークと同様の視点での支援が必要となります。証拠の確保、交渉と各種手続の事務遂行。弁護士が取り組むべき作業はいくらでもあります。
弁護士費用については、条件をみたす必要はありますが、犯罪被害者に対する弁護士会による支援制度や法テラスの民事法律扶助制度を活用することもできます。
被害者を日常生活に戻すための支援が弁護士業務においても求められています。弁護士も日々工夫して取り組まなければならないですし、ご相談する方・支援する方も弁護士に何を望むか、アイディアを出しながら、支援をする弁護士を見つけていただきたいです。
シェルターからの報告
10月17日は徳佐へのりんご狩りの日でした。自助グループが毎年実施している行事です。マイクロバスを無料で借りることができ、運転手はスタッフのご伴侶さんにお願いしました。今年は2歳から70歳代までの男女15名の参加がありました。マイクロバスに乗り約1時間30分で到着しました。りんごのもぎ方の説明を受けた後、太陽をいっぱい受けた甘くておいしそうなりんごを見つけては、皮ごと丸かじりしました。捥いだばかりのりんごを服で拭いてほおばると、シャキッと果汁が飛び、硬くて甘酸っぱくて、澄んだ空気と太陽が心を洗い流してくれます。昼食は、野外炊飯の炊き込みご飯と天ぷら・おでんなど、自然を満喫しながら全員でお腹いっぱいいただきました。その後、オーナーからダッチオーブンによる“りんごのコンポート”の実演があり、お土産にいただきました。また、AさんとBさんが、トイレや水場をピカピカに掃除され見違えるほど綺麗になりオーナーも感激されました。近くを通るSLを見たり、自然の中のたぬきをみたり自然に触れながらのスローな旅でした。
12月23日、フードバンク山口の紹介で宇部市のKさんご夫妻からみかんをもぎに来てほしいとのことで、午後みかん狩りを予定していました。しかし、当日は朝から雨模様で急遽午前中にスタッフ2人で畑にかけつけ、摘果作業に向かいました。みかんの木は1本でしたが、たわわに実っていました。すべて摘果してほしいというご夫妻の要望で、雨が降り出す前にと急ぎ、40分で1本丸ごと全部摘果しました。50kgの収穫となりました。さらに、さつま芋(鳴門金時)1畝、20kgもいただきました。来年のためにみかんの木の剪定もしながらの慌ただしい時間で
したが、収穫量の多さに驚き、貴重な体験に感謝しました。来年は子どもたちと一緒に芋掘りやみかん狩りが楽しめそうです。みかんは味を見て購入された木ということで、酸味と甘みのバランスのいいたいへん美味なみかんでした。
この日、ちょうどフードバンクからクリスマス用のお菓子が届きましたので、午後からはお菓子やみかん・さつま芋などでクリスマスプレゼント6家族11人分を作り、自助グループのメンバーやシェルター退所者の方々に宅配しました。ちょっとお邪魔させていただき、近況などをきかせてもらういい機会になりました。クリスマスプレゼントを持って行った皆さんにとても喜んでいただきました。
10月からシェルターのスタッフが二人増えました。MさんとKさんです。今、DV研修をしながらシェルターや自助グループのお手伝いをしてもらっています。即戦力としての彼女らの活躍が期待できます。新しいメンバーが増えることで、新しい発想やアイディアなどもいただき、心新たにしているところです。
山口県に「フードバンク」が設立されています。ご協力を!
辻龍雄
Wikipediaの「フードバンクFood Bank」を要約すると、「食べられるのに廃棄される食品を寄付してもらい食糧に困っている人に渡す民間の社会福祉活動を、食品ロスの削減活動と連携させた活動」と解釈していいだろう。1960年代に米国アリゾナ州フェニックスで、「まだ食べられる食品」がスーパーマーケットで大量に廃棄されることを、あるシングルマザーに指摘されたことが活動開始のきっかけらしい。
その後、「企業からの規格外食品(食べられるのに包装不良などで廃棄される食品)」を寄付してもらう活動に加えて、農家から「収穫し残した作物」の寄付を受ける活動も開始され、それは「セカンドハーベスト Second Harvest(二回目の収穫)と呼ぶようだ。
農林水産省のフードバンクについてのホームページをみると、日本には40の団体があり、その内の28団体は法人格を有している。取り扱う食品の量について記載のある33団体で年間平均153.2トン(3~2,057トン)。2000年に東京で最初の団体が設立され、その後の設立時期をみると2003年(1団体)、2007年(2団体)、2008年(9団体)、2009年(4団体)、2010年(3団体)、2011年(7団体)、2012年(6団体)、2013年(6団体)が設立されている。2007年頃から各地に設立の動きが始まったようにみえる。「フードバンク山口」は2014年4月設立で2015年実績約2トン。
食品を取り扱うことから法律のしばりもきつい。Wikipediaによると米国では連邦法で「善意で寄付した食品が元で万一トラブルが発生した場合でも、故意や重過失がない限り寄付した側は法的責任が問われない」旨定められているという。一方、日本では、「食品の提供に際しては、食品衛生法、JAS法、景品表示法、廃棄物処理法、消費者安全法などさまざまな法律に対応する必要がある」と農林水産省フードバンクの企業向けのページに明記されている。この状況では企業は及び腰になるだろう。
フードバンクの活動は、食品ロス削減活動であるとともに、生活困窮者への生活支援の一つである。私たちの団体は寄付して頂いた冷蔵庫、洗濯機、電子レンジなどの家電、家具、食器、寝具、衣類などを、DV被害者の生活自立支援物資として提供してきた。これまでもフードバンク山口から食糧の支援を受けているが、連携できれば、自立を目指しているDV被害者への食糧支援を充実できるだろう。
「フードバンク山口」のホームページは
http://fbyamaguchi.main.jp/。食品のご寄付(常温で長期保存のできる未開封の米、乾麺、調味料、食用油、缶詰などの食品)、運営資金のご寄付、賛助会員になるなどのご協力ご支援を宜しくお願い致します。