ニュースレター36号
2020/01/18
びーらぶインストラクター養成講座
びーらぶインストラクター養成講座を主催しました。10月に4日間の基礎講座をしました。40名の参加があり、その内、県外からの参加者が3名ありました。基礎講座では、抑圧の理論をもとに性暴力、DVの構造についての解説があり、分かりやすい講座でした。その後、トラウマ、法律関係、アドボカシ―・クライシス、危機介入、子どもへの虐待、高齢者・障がいを持つ人々、加害者、多文化社会におけるDVなどを勉強しました。他では学べない同じ講師による12講座を一貫した流れでDV全般にわたる情報、さらに海外情報、今日的な日本の現状などを織り交ぜながらの講座は大変好評でした。
講師の松本和子さんは民間シェルターの代表として活躍されています。ちょうど、全国版のニュースで民間シェルターの困窮状態について、内閣府や男女共同参画担当大臣などと話されている映像も放映されていましたから、ニュース内容も身近に感じられたと思います。
応用編では、基礎編をすべて受講した人のうち、20名が受講されています。11月30日、12月1日は母親プログラムの12講座を講師が実演の後、参加者が3グループに分かれて分担しながら実習しました。12月7日、8日に子どもプログラムを2グループに分かれて5講座までを実習しています。来年1月11日、12日には子どもプログラムの残りの6講座から12講座までの実習があります。
このようにして、確実に新しいインストラクターが誕生しつつあります。来年度、母と子の心理教育プログラム「びーらぶプログラム」を実施する方向で検討しております。
中島幸子氏講演会主催
性暴力被害を知る「トラウマと解離」
日時 2020年1月28日(火)10時~16時
場所 山口グランドホテル 末広の間(3F)
山口市小郡黄金町1-1 電話083-972-7777
参加費 1万円
申込 NPO法人山口女性サポートネットワークに直接電話、FAX,メールでお申し込みください。
お名前、ご住所、所属、連絡先(携帯番号かメールアドレス)
申込先 電話・FAX 0836-37-5611、ysnw@joy.ocn.ne.jp
赤い羽根テーマ募金のお願い
今年度も1月から3月に赤い羽根テーマ募金がはじまります。赤い羽根テーマ募金は、みなさま方の赤い羽根テーマ募金へのご寄付が直接、NPO法人サポートネットワークに助成されるものです。是非、ご協力をお願いします。このお金はシェルターの運営資金や、面接同行費などに使われます。
シェルターからの報告
今年度も、入所者がたくさんおられます。シェルター満室のため、入所者に待機してもらったこともありましたし、相談室として使っている部屋に緊急避難してもらったこともありました。今、シェルターが足りない状況です。
少しずつシェルターでの生活に慣れて安全が確保されてくると、「原因不明の頭痛や咳がなくなった」、「アトピーが軽くなった」と言われることもあります。「これまで生活のストレスがこんなにも私の体を痛めつけていたのだと分かりました」と、言われます。そんな話を聴くと、経営的にも精神的にも厳しい状況ではありますが、シェルターを維持してよかったと思います。力がでるようになると様々なことが解決でき、シェルター退所となります。
最近、母親と一緒に入所した小学生の少年が185センチの大柄な青年になって訪ねてきてくれました。また、何年か前の入所者が訪ねてきてくれて昔話をしてくれることも嬉しいことの一つです。
物品提供ありがとうございました。お蔭さまで、たくさんの品物を当事者に提供できました。
家電や布団類は、シェルターから引っ越す時に提供できました。お菓子や食料品、おもちゃ類はクリスマスプレゼントとして活用させていただきました。
立法の下準備が進む共同親権制度
NPO法人山口女性サポートネットワーク 理事 弁護士 鈴木 朋絵
今年9月、離婚後の子の親権について、法務省が共同親権についての研究会を発足させると報道発表をしました。これを受けて、公益財団法人商事法務研究会に「家族法研究会」が設けられ、11月15日、12月17日と研究会が開催されています。ここまでは現行法における親子間の法律関係を列挙しているというところですが、「共同親権者間で合意をすることができない場合の現行法の規律」という検討もなされており、共同親権制度の制定をはっきり意識した議論がなされているところです。
法務大臣が森雅子議員に変わり、11月12日には「一般論では離婚後も父母の双方が養育に関わるのは、子供の利益の観点から非常に重要。子供の利益が不当に侵害されないよう多様な意見に耳を傾けたい」との意見も述べておられますが、これから1年間の予定で研究会の議論が行われた後、その成果をもって離婚後共同親権制度の法案を提出するのだろうと思われます。
「海外では離婚後も共同親権が認められているのになぜ日本では認められないのか」といった不満は各地であふれています。
それでは、共同親権制度がある国々では、配偶者暴力や児童虐待のあるケースでの共同親権の制限が整備されているのでしょうか。一般財団法人比較法研究センターが平成26年12月に公表した「各国の離婚後の親権制度に関する 調査研究業務報告書」(法務省サイトにアップされています)では各国の法制度が紹介されています。
アメリカには一方当事者の申立てで認められる暫定的保護命令の制度があり、フランスにはDVで離婚しようとする親には離婚手続中であれば、DVの被害者に子を伴う別居を許可することができる制度が民法上に用意されています。
しかし、映画「ジュリアン」(グザヴィエ・ルグラン監督、2017、フランス)を見ると、母が、DV加害者である父と離婚後に共同親権を持つことになり、面会交流を悪用して復縁を迫る父から母を守るために苦慮する11歳の少年が描かれています。共同親権制度がある国でも、確実にDV被害者が守られていない実態があるからこそつくられたのでしょう。報道によれば、欧州諸国ではフランスはドイツについでDVによる女性の殺人被害が多く、今年はフランス全土でデモが行われ、政府はシェルターを1000に増やし、加害者に監視装置をつけるなどの方針を打ち出しています(2019.9.4 afp通信)。それだけDV被害者保護にまだまだ多くの課題を残していることがわかります。
共同親権制度導入を検討するというのであれば、加害者と被害者の接触を確実に避けることができるように、DV被害者支援の方策のさらなる充実についても、必ず整備していただきたいです。