ニューレター41号
2022/07/20
令和3年度事業報告―定期総会の事業報告
令和3年度はこれまでの事業の相談、自立支援、シェルター、研修予防啓発事業に加えて、内閣府の地域女性活躍推進交付金による「つながりサポート事業」を山口県から委託されました。この事業は、孤立・孤独で不安を抱える女性が、社会との絆・つながりを回復することができるようきめ細かい支援を目指しているものです。また、令和2年度から始まったパイロット事業によってSNS相談やアウトリーチ、びーらぶプログラム、居場所づくりをしました。赤い羽根テーマ募金、中央募金会からの助成金も受けることができました。
1.相談事業 令和3年度は電話相談とSNS相談を行いました。赤い羽根テーマ募金やパイロット事業で相談員の謝金、交通費や家賃などを出すことができました。また、電話相談は平日(祝日を除く)10時~16時まで対応し、104人から406件の相談を受けました。SNS相談は、毎週水、木曜日(祝日を除く)18時~22に対応し、29人から68件の相談を受けました。
2.自立支援事業 パイロット事業と赤い羽根テーマ募金によってシェルターを退所した人たちへの面接や同行支援を行いました。面接や家庭訪問は32人に114回行っています。同行支援は12人に27回行いました。 さらに、パイロット事業によって、前年度に続いてびーらぶプログラムを行いました。10月~3月まで2週おきに12回行いました。参加は5家族の母親と子どもが参加し、プログラムに参加できない子どもたちには託児をしました。母親たちはプログラムにある子どもへのかかわり方を学び、自己肯定感を高めることができました。子どもたちも自己肯定感を高め、母親との関係も少しずつ良くなっていきました。12回のプログラムは長いですが、母親も子どもも変化していく姿を目の当たりにしました。 パイロット事業で、DV被害者のヒーリングケアとしての居場所づくり「かもみーる」を月2回行いました。参加者は同じ体験者とおしゃべりをしていました。14家族延べ112人が参加し、その内子どもは8人延べ54人が参加しました。母親や子どもたちは楽しみにしていました。
3.シェルター事業 山口県から夜間警備保障の補助金、宇部市からDV被害者支援としてシェルターのテレビを購入しました。赤い羽根テーマ募金と、中央共同募金会からシェルター維持のための相談員の謝金・交通費・消耗品費、家賃、水道光熱費などの支援を受けました。山口県から委託が1人ありました。入所者は22家族で、同伴児者は23人でした。年代別の内訳は20代5人、30代6人、40代6人、50代2人、60代2人、80代1人で40歳未満の人が半数を占めています。DV被害者20家族、家族からの避難1人、住まいを無い1人でした。
4.研修・予防啓発事業 山口きらめき財団、赤い羽根テーマ募金の支援を受けてびーらぶプログラムインストラクター養成講座を行いました。新しくインストラクター7人を養成し、新インストラクターも含めてびーらぶプログラムを実施することができました。 デートDV防止講座を中学校4校、高等学校8校、大学1校で行いました。新型コロナウィルスによって日の変更やリモート対応などもありました。DV防止講座はたくさんの団体から要請がありましたが、中止となった団体が多く、結果的に1団体のみ実施となりました。
5.つながりサポート事業 内閣府の事業を山口県からの委託で8月から2月の平日10時~22時まで対応し
ました。様々なことで悩んでいる女性への支援をするものです。電話相談116人400件、メール相談14人97件、SNS相談35人103件でした。女性相談会を県内8か所で22回実施し41人の参加がありました。アウトリーチとしての面接25回、同行支援4回行いました。生理用品配布会をドットスタイルという団体に委託して707セット、単独で111セットを配布しました。
移転しました。老朽化したシェルターを修繕や補修をしてきましたがそれも限界がきて、思い切って4月に転居しました。物件を探すのにとても苦労しました。なんとか希望に沿い、古い建物ですが手入れが行き届いているので快適にすごせています。事務所とシェルターの大量の荷物を1か月近くかけて運び、相当なエネルギーでした。高くなった家賃をどう補填するかが一番の課題です。また、ご厚意によって無償で借りているシェルターも移転となりました。それぞれ快適な部屋となりました。シェルターの改装費として日本フィランソロピー協会を通じて株式会社LIFULLの助成で、エアコン設置や家電、家財道具などを購入することができました。
パープル山口SNS相談(DVのチャット相談) 斜体文 https://form.purple-yamaguchi.jp/ 毎週水曜日・木曜日 17:00~21:00
・上記のURLサイトでメールアドレスを入力いただくとチャット用URLが届きます。
・携帯電話アドレスの場合purple-yamaguchi.jpのドメインからメールを受け取れるように
設定をお願いします。
会費・賛助会費・寄付をありがとうございました。
物品のたくさんありがとうございました。
令和3年度赤い羽根テーマ募金にご参加くださいましてありがとうございました。
会員、賛助会員のみなさまへ
私どもの活動に、いつもご理解と温かいご支援を賜り、誠にありがとうございます。
被害女性のためのシェルター活動や被害女性の自立に向けての居場所づくりなど様々な事業を実施しております。私たちNPO活動の基本は、ご理解いただくみなさま方のご意志とご篤志に支えられております。どうか本年度も、多くのみなさまのご賛助ご支援を賜りますようお願いいたします。
振込用紙を同封いたしました。既にお振込みくださり、重複しましたらご容赦ください。
会員:年会費5千円、賛助会員:(個人年会費1口3千円、団体年会費1口1万円)
郵便振替口座:01370-2-68031 口座名:山口女性サポートネットワーク
インスタレーションという手法
弁護士 鈴木朋絵
森美術館(東京)では、現在「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」という展示会を開催しています(2022年6月29日~11月6日)。
立て続けのDV案件、そして離婚後共同親権の立法作業が進んでいる現状に疲れてしまったので、心をリセットしようと森美術館に初めて飛び込んでみたのです。
オノ・ヨーコさんの作品、蜜蝋の壁でできた部屋、緻密な木の肌を描いた油絵、北極点で24時間かけて地球の自転と別方向にまわる動画アートなど、現代アートのわけのわからなさを見て、すっかり心がほぐれました。
次に入った部屋で私は真っ白になりました。そこには全国シェルターネットの北仲千里さんのインタビュー動画が流れていたのです。よく見知ったお顔が大写しで驚きました。
その部屋の奥の壁を見上げると、一面にDVの構造を図解したアートが展示されていました。別の壁には「家父長制を喰う」というタイトルで、男性の形のパンをむさぼりくう動画の展示が。アーティストの飯山由貴さんが、DVをモチーフにして、被害者、加害者、支援者にそれぞれインタビューをした動画などを作成し、これを展示。その作品を展示する空間自体もアートとしていたのです。このような手法をインスタレーションと呼ぶのだと初めて知りました。
調子が悪くなった方は回避して下さいと案内がなされ、自分が被害者であると気がついた方のために、相談先情報も配布されていました。この部屋の中には机と椅子があり、自分の中に生まれた言葉を飯山さんに伝えるための紙と鉛筆とポストが置いてありました。
北仲さんは「公的シェルターには限界がある、中学生以上の男のお子さんは同行できない」「逃げた後の生活の組み立てを支えなければならない」「日本のDV被害者支援の制度は中途半端」など、民間シェルター運営の苦労の実態について、言葉を選びつつ、苦労を語っておられました。山口女性サポートネットワークで懸命に働いておられるスタッフの方々のことを考えながら最後まで見ました。加害者へのインタビュー動画は機器の調子が悪かったようで再生されていませんでした。養育費も払わない加害者に怒っていた日なので、それでよかったかもしれません。
会場には静かに、言葉もなく、動画を見続ける方々が何人もおられました。
飯山さんが非常勤講師をつとめておられる多摩美術大学のサイトには「過去の記録物や人への取材を手がかりに、社会と個人の影響関係に関心を持ちながら映像やインスタレーションを制作している。」と紹介されています。DVを作品とするという現代アートの奥深さに感嘆しました。仕事を置いて休むという当初の目的を忘れ、作品を鑑賞しました。
さて、冒頭に書いた離婚後共同親権制度は、現在法制審議会にて検討されています。養育費の新制度や暫定的面会交流制度もあわせて立法されるようです。夏をすぎたらおそらくパブリックコメントが求められます。今のうちに法務省のサイトで内容をチェックし、ぜひみなさまもご意見を出してください。