ニュースレター45号
2024/07/30
定期総会を終えて
令和5年度事業報告と令和6年度事業計画
「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(女性支援新法)が今年の4月から施行されました。また、保護命令の内容も変わりました。それによって、相談や一時保護の対象者も変わりつつあるところです。これまで恋人や配偶者からの身体的暴力で緊急性がある場合でないと保護命令や保護の対象になりませんでしたが、精神的暴力も対象となりました。しかし、それをどう証明するかが大きなカギとなります。改正DV法については、P4に鈴木朋絵弁護士からコミットメントを頂いております。ご覧ください。
NPO法人山口女性サポートネットワークは民間ですので特に対象者が変わったわけではありません。行き場のない女性たちを保護したり支援したりしているのは同じです。令和6年5月18日に総会を開きました。令和5年度の事業報告と令和6年度の事業計画をお伝えします。
令和5年度は相談事業、自立支援事業、一時保護事業、広報啓発事業、女性自立支援事業をしました。令和6年度もこの事業内容は同じです。
相談事業では電話相談、メール相談、チャット相談で対応しています。
一時保護事業の入所相談は市町の相談員や弁護士、警察、本人からあります。令和5年度は30家族を保護しました。これまで最も多い入所者でした。退所先は公営住宅、民間アパート、場合によっては施設などもありました。令和6年度は4月から6月末までに12組26人を受け入れています。短期の人も多いですが、ものすごいスピードで入退所を繰り返しています。
自立支援事業は、シェルターを退所した後のサポートの事業です。シェルターを退所した時点では離婚が成立していない人がほとんどで、弁護士事務所や裁判所に同行をしています。シェルター退所後はつながりが少なくなるために孤独感に陥ります。それを防ぐために、居場所として月2回「かもみーる」をしています。相談カフェも毎週開いています。また、母親も子どもも傷ついていますので、子どもは放置されたまま育つと暴力に慣れたり暴力を学習したりしています。成長してDV被害者や加害者になる可能性があります。そこで心理教育プログラム「びーらぶ」で非暴力について学び、被害を受けた自分に非があるのではなく加害者の責任であることなどを学び、母親も子どもも自己肯定感を高めていきます。今年度は6月から未就学児と母親の4家族が参加しています。この未就学児は5回の講座です。また、秋からは小学校高学年の家族を対象に12回連続講座を行う予定です。
さらに、このプログラムを運営する人をインストラクターと言いますが、インストラクター養成講座を7月14日から始めます。もし、お時間が許せば、一度基礎講座だけでも受講されるとDVとは何かということがお分かりになると思います。受講のご参加もご検討ください。別紙でご案内しております。
また、今年から工房として、ブラウスやワンピースの大作や袋物などをつくったりしています。手作業をすることで心が落ち着いてくることを狙った事業です。
今年の4月から困難家庭の子どもの学習支援をしています。現在9人の子どもたちの勉強をみています。これまで母親は夫の支配下でうつ状態になったり、自由がなかったりしたため、子どもたちの世話まで力が及ばない家庭がたくさんありました。そのため学校の授業が面白くなく成績も今一つの状態だった子ども一人に指導者一人がつき、子どもたちの状況に応じた対応をしています。少しずつ勉強も分かるようになると学校に行くのも楽しみになっているようです。毎回提供するおにぎりも大好評です。
「つながりサポート山口」はDVをはじめとして、女性のための何でも相談を山口県の委託によって行っています。県内のあちこちに面接に行っています。毎週金曜日の15時~19時の相談カフェでは、軽食をとりながらおしゃべりをしています。孤食から解放されたい人や、話し相手が欲しい人が参加しています。
今年度からステップハウス事業も行っています。ステップハウスというのは、公的・民間の一時保護を退所した人で、住まいや仕事が決まっていない人をサポートするところです。シェルターでは安全対策は万全ですが、働きに行くことや外出がままなりませんが、ステップハウスでは安全対策をした上で、自立に向けて社会性を身に着けるための施設です。すでに2家族が入所しています。
シェルターからの報告
令和5年度のシェルター入所者は30家族でしたが、令和6年度が始まって3か月で13家族に27人の入所がありました。退所時には中古の家電等の提供や、シェルターで使っていた布団を持って出てもらうことにしています。そのため今寝具類が不足しています。以前、旅館を廃業されたところや、個人的に寝具を頂いたこともありましたが、今入所者も多くなり寝具が足りなくなっています。
お米を皆様からたくさん頂きました。シェルター入所者や退所者の苦しい生活の助けになっています。お米を寄付してくださるお陰で、お米を提供することができております。シェルターの食料として活用させていただいております。
会費・賛助会費・寄付をありがとうございました。
たくさんの方から会費や賛助会費、寄付を頂きました。
会員、賛助会員のみなさまへ
私どもの活動にいつもご理解と温かいご支援を賜り、誠にありがとうございます。
被害女性のためのシェルター活動や被害女性の自立に向けての居場所づくりなど様々な事業を実施して
おります。私たちNPO法人の活動の基本は、ご理解いただくみなさま方のご意志とご篤志に支えられております。どうか本年度も、多くのみなさまのご賛助ご支援を賜りますようお願いいたします。
振込用紙を同封いたしました。既にお振込みくださり、重複しましたらご容赦ください。
会員:年会費5千円、賛助会員:(個人年会費1口3千円、団体年会費1口1万円)
郵便振替口座:01370-2-68031 口座名:山口女性サポートネットワーク
物品の提供をありがとうございました。
たくさんの物品をありがとうございます。シェルターの備品や入所者への提供物として活用させていただいています。お米は入所者に提供しています。居場所、相談カフェ、工房、学習支援の場でも活用しています。
赤い羽根テーマ募金にご協力をありがとうございました。おかげさまで共同募金会から165万円の助成を頂くことができました。
この助成金は、シェルター入所者のための食料や衣類の購入、洗剤などの日用品の購入、台所用品などの消耗品として使っています。また、相談員の面接や同行支援費にも充てています。シェルター関係で100万円、さらに、今年度はびーらぶプログラムのインストラクター養成講座を開催しますのでインストラクター養成講座に65万円を充てる
予定です。
改正DV防止法が今年4月から施行されました
弁護士 鈴木 朋絵
今回の改正の目玉は大きく6つです。使いこなしていきたいです。
(1)精神的DV・経済的DV・性的DVのケースでも申立てができる可能性が生まれました。
①申立人要件に「『自由、名誉又は財産』に対する加害の告知による脅迫を受けた者が追加されて、広くなりました。内閣府のリーフレットには次の例が記載されていますが、言うことを聞かないと子どもを殴ることで言動を強制するケースなど、他の例も考えられます。でもモラハラを含む精神的DVの全部が含まれるわけではなさそうです。組み立てが肝心です。
・部屋に閉じ込め、外出しようとすると怒鳴る
・土下座を強制する
・従わなければ仕事を辞めさせると告げる
・性的な画像を広く流布させると告げる
・悪評をネットに流して攻撃すると告げる
・キャッシュカードや通帳を取り上げると告げる
②被害を受けるおそれの要件に「心身に重大な危害を受けるおそれが大きいとき」が追加されました。
条文上は、診断書の提出は求められていません。しかし、行政と司法が申し合わせをしたようです。うつ病、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、適応障害、不安障害、身体化障害といった症状が出ていることの診断書の提出が必要だと行政からも司法からも文書が出ています。憲法上保障された裁判官の独立の観点からは問題がありますが、迅速に発令されるにはどうするかという実務担当者からすれば考えなければならない点です。
(2)接近禁止命令等の期間が6か月間から1年間に伸びました。
(3)LINEなどのSNSでの嫌がらせ、GPS情報取得などが禁止の対象に入りました。
緊急時以外の連続した文書の送付・SNS等の送信、 緊急時以外の深夜早朝(午後10時~午前6時)のSNS等の送信、性的羞恥心を害する 電磁的記録の送信、位置情報の無承諾取得が追加されました。
(4)子への電話等禁止命令制度が新たにできました。
(5)被害者が所有者または賃貸人である家からの退去命令制度ができました。
(6)命令違反の罰則が強化されました( 2年以下の懲役または200万円以下の罰金)
国会答弁で法律上同性のカップル間の暴力も対象になるとの解釈が示されました。人の生命身体の安全を守る法の趣旨からすれば当然のことですが、東京地裁がこれを否定する解釈で論文を書いていたため、裁判所で取り扱うと明確になったのは重要です。
女性のためのつながりサポート山口
様々な困難な問題を抱える女性たちのための支援です。非正規雇用、女性の低賃金、公共料金や物価の
高騰による生活の不安、家事・育児の負担、ワンオペ育児、子育ての悩み、DV、親子関係、職場や近隣の
人間関係、介護の問題、病気の辛さ、医療費や教育費の負担・・・など一緒に考えていきます。
毎週月~金曜日(年末年始・祝日を除く)10:00~20:00
★ 電話相談 ☎0836-37-5611
★ メール相談 mail: ysnw2021@outlook.jp
★ SNS(チャット相談)右のQRコードからお入りください。
★ 面接相談 要予約
★ 相談カフェ 毎週金曜日16~20時(要予約)お茶を飲みながらお話ししたり
して、ゆっくりした時間を過ごしています。
★ 見回り:若年女性対象 ★ 緊急保護:一時的に居場所を無くした方への対応