ニュースレター44号
2024/01/04
新春のお慶び申し上げます。
新年早々の能登半島地震には皆様も驚かれたことでしょう。亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。元日にリモートでの相談を全国の相談員たちと受けていた時、富山県の相談員から「今地震がありましたが大丈夫です」と言われました。その直後、その人の画面の電灯が大きく揺れはじめ、書類棚のロッカーのドアが開いたり閉じたりし、長い時間大きく揺れていました。私も地震に遭ったような気分になりました。未だ能登半島では復旧がままならず、寒さも一段と厳しくなっています。災害の時に起こりやすい女性への性被害が気になっているところです。それに対して対応を考えようという動きも出ています。全国からの支援によって状況に応じた支援の手が行き届くことを期待しています。
「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(女性支援新法)が2022年5月に成立しまし、その施行が2024年4月1日からとなります。この法律はこれまでの売春防止法から抜け出して新たな女性支援の枠組みを構築し、これまで問題視されてこなかった女性の人権問題として捉えなおしたという点に意義があると言われています。行政の相談先などの名称が変わります。婦人相談所から女性相談支援センターに、婦人相談員が女性相談支援員に、婦人保護施設が女性自立支援施設となります。民間との協同もうたわれています。これまでの売春防止法によるDV被害者支援が変わることになり、柔軟な対応を求められ、障がいのある女性や外国籍の女性などにも対応できるよう対象者の幅が広くなったと考えられます。閉鎖的な公的シェルターから多様な問題を抱える女性たちへの対応ができるよう期待しています。
この法律に先駆けて、ここ3年間山口県からNPO法人山口女性サポートネットワークへの委託として「つながりサポート山口」で困難な問題を抱える女性たちの相談を受けてきました。孤独孤立した女性たちからの相談がたくさんあります。相談窓口として電話、メール、SNSなどで相談窓口を広げています。また、面接相談は相談者の住まいの近くまで出かけています。この相談の中にはDV被害者の相談もあります。シェルター入所への希望があれば、公的シェルターの案内や当NPO法人のシェルターを案内しています。2023年4月から12月末までに電話相談1,366件、メール相談187件、SNS相談49件、訪問面接48件、緊急避難者への面接同行など23件、相談カフェ延べ140人がありました。年代別にみると20代414件、30代383件、40代260件、50代233件、60代以上251件でした。若い女性たちの相談も多いことがわかります。この件数には同じ人が何度も相談をしています。最も多い悩みは不安など心の問題であり、病気の問題、仕事の悩み、人間関係、家庭の問題と続いています。精神的な問題や人間関係の難しさによる生きづらさが分かります。毎週金曜日に4時間ほど相談カフェを開いています。孤独・ちょっとしたことを話したいなどと言う人が利用しています。軽食を食べながら過ごしてもらっています。ただ、遠方なので相談カフェに来たくても来れない方々に対しては面接という形で対応しています。
この相談カフェでは、9月からある家族の小学生たちを対象に学習支援の試みをしています。子どもの学習支援をしてみると、これまでそばで勉強をみてくれる大人がいなかったがゆえに学校教育だけではなかなか身についていません。特に算数は思考力が要るためわからなくなっていました。少しずつ理解できてくると意欲がわいてくるようです。今後は、相談カフェとは切り離した形で子どもの学習支援に取り組みたいと思っています。
シェルターからの報告
シェルター入所者は4月から12月末までに24家族を引き受けています。部屋が足りなくて空くまで半月ほど待ってもらったこともあります。10日以内に退所した人は5人いました。DV被害者もいますがつながりサポート山口の相談者で一時的に避難場所が必要になった人が3人いました。自分のアパートにいることが精神的につらくなった、正月で他の兄弟が帰って来るので居場所がないなどがありました。このような短期の人に対して、半年以上の長期になる人もいます。経済的にも困窮状態にもかかわらず社会資源の活用もできず、安全に退所できる方向性も見いだせないまま時間だけが経っていきましたが、突然降ってわいたように安全に自宅に帰ることができたケースもありました。
退所したら当NPO法人と関係が切れる人もいますが、何年もつながっているいる人もいます。離婚調停や離婚裁判の同行などで継続的な支援をしていることもありますし、孤独を癒すために月2回の居場所に通ってくる人もいます。この居場所では同じ境遇の人やスタッフと話をしたり、子どもを遊ばせたり、昼食を一緒にとったりしています。この居場所はシェルターを退所してもこれまでの人間関係が切れたため新たな関係づくりの下準備として活用できるでしょう。。
令和5年度赤い羽根テーマ募金のお願い
赤い羽根テーマ募金は山口県共同募金会が行っているもので、毎年応募して認定されています。令和5年度は令和6年1月から3月までテーマ募金の期間です。このテーマ募金はみなさまのご寄付がそのままNPO法人山口女性サポートネットワークに届けられるものです。今回のテーマ募金の使途はシェルター入所者が安心して生活できるために食料費や洗剤などの消耗品と相談員の面接や同行費として活用させていただきます。
山口県共同募金会赤い羽根共同募金
https://www.akaihane.net/doc/theme/2932 で案内されています。
会員、賛助会員のみなさまへ
私どもの活動にいつもご理解と温かいご支援を賜り、誠にありがとうございます。
被害女性のためのシェルター活動や被害女性の自立に向けての居場所づくりなど様々な事業を実施して
おります。私たちNPO活動の基本は、ご理解いただくみなさま方のご意志とご篤志に支えられております。
どうか本年度も、多くのみなさまのご賛助ご支援を賜りますようお願いいたします。
振込用紙を同封いたしました。既にお振込みくださり、重複しましたらご容赦ください。
会員:年会費5千円、賛助会員:(個人年会費1口3千円、団体年会費1口1万円)
郵便振替口座:01370-2-68031 口座名:山口女性サポートネットワーク
結婚制度というインフラ-同性婚の法制化について
弁護士 鈴木 朋絵
2015年に、東京都渋谷区で同性パートナーシップ条例ができました。この制度は全国に広がり、今年1月7日時点で全国370以上の地方自治体で実施されています。
地方自治体の制度なので、法的効果は何もありません。もちろん、住民サービスの一環として、公的な書類で婚姻に相当する関係である、家族であることが証明されるということは、利用する同性カップルの方々にとっては地域から受け入れられているとの実感を得られる意義があります。実施している自治体の住民にとっても自分たちの地域にLGBTQ(性的マイノリティ)の方々が住んでおられることが見える化したと思います。
しかし、法律上の同性カップルに家族としての法的保障が何もないというのは、当事者の暮らしを不安定にさせるものがあります。パートナーが救急搬送された後、残された方は家族として扱ってもらえず、知らないうちに死別。という例はいまでも全国各地で起きています。
私はDV被害者支援もしながら、同性婚の法制化を求める国家賠償請求訴訟の弁護団にも入っています。2月の判例タイムズを見ていたら、配偶者暴力防止法の運用について、東京地裁・大阪地裁保全部裁判官たちによる記事がでていて、その中で、同性カップル間のDVに対して保護命令を出すことには消極的であるとの意見が書かれていたことが大きなきっかけとなりました。その後、同性カップル間のDV被害者となった性的マイノリティの方々が、自分を嫌い抜いている実家に戻り、そこでもいじめられるという話も聞き、結婚制度というのは福祉につながるための法的インフラだったことに気づかされました。DV被害者を支援するためには、結婚制度を整備しなければならない。すべてのセクシュアリティの人にとって、親密に交際したパートナーと別れる際の安全を図りたいと望みますが、そのためになんと時間と手間のかかることか。それでも地方裁判所が5判決中4つで違憲判断をしています。現状が不平等であることは司法の目からみても明らかです。
今年2月6日に「同性婚法制化のQ&A」というブックレットを岩波書店から出します(定価627円)。執筆者のひとりです。よろしければ、ぜひお目通しください。
女性のためのつながりサポート山口
様々な困難な問題を抱える女性たちのための支援です。非正規雇用、女性の低賃金、公共料金や物価の高騰による生活の不安、家事・育児の負担、ワンオペ育児、子育ての悩み、DV、親子関係、職場や近隣の人間関係、介護の問題、病気の辛さ、医療費や教育費の負担・・・など一緒に考えていきます。
毎週月~金曜日(年末年始・祝日を除く)10:00~20:00
★ 電話相談 ☎0836-37-5611
★ メール相談 mail: ysnw2021@outlook.jp
★ SNS(チャット相談)右のQRコードからお入りください。
★ 面接相談 要予約
★ 相談カフェ 毎週金曜日16~20時(要予約)お茶を飲みながらお話ししたり
して、ゆっくりした時間を過ごしています。
★ 見回り:若年女性対象 ★ 緊急保護:一時的に居場所を無